Shopifyと他のネットショップを比較|手数料や使いやすさを製造業の視点で解説

製造業のEC選定マップ全体像の図解

「ネットショップを始めたいけれど、Shopify・BASE・STORESなど種類が多すぎて選べない」
「手数料や月額費用を比べたいが、どこを見ればいいのかわからない」

こうした声は、私のところにも製造業の経営者やWeb担当者から頻繁に届きます。
特に中小企業では、EC担当の専任者がいない状態で、経営者自身が判断しなければならないケースが珍しくありません。

ネット上には「おすすめネットショップ比較」の記事があふれていますが、その多くは小売業やハンドメイド作家を想定した内容です。
製造業のように受注生産があるSKU(商品点数)が多いBtoB取引と直販を両立したい既存の在庫管理システムと連携させたいといった条件が加わると、汎用的な比較記事だけでは判断材料が足りません。

この記事では、Shopify・BASE・STORES・カラーミーショップ・makeshop・EC-CUBEの6つのプラットフォームを、手数料のトータルコスト製造業の実務要件の両面から比較します。
読み終えたあとには、「自社の条件ならどのプラットフォームが合うか」を社内で説明できる状態になっているはずです。

目次

製造業のEC選定が難しい理由。汎用比較では判断できない

ネットショップの比較記事で最初に出てくる情報は、たいてい「月額費用」と「決済手数料」の一覧表です。
これ自体は大事な判断材料ですが、製造業の場合はその手前に確認すべき前提条件が複数あることを見落とすと、後から「このプラットフォームでは対応できなかった」という事態に陥ります。

製造業EC選定で見落としやすい5つの落とし穴
製造業特有の5つの前提条件は連鎖しており、1つでも該当すれば「月額費用の安さ順」では判断できません。

私がこれまで製造業のEC立ち上げを支援してきた中で、選定段階の失敗パターンには共通点がありました。

製造業がEC選定で見落としやすい5つの前提
① 受注生産モデルへの対応(注文後に製造するフローに、カート機能だけでは対応しきれない)
② SKU(商品点数)の規模(色・サイズ・仕様バリエーションが数百〜数千になるケース)
③ 基幹システム(在庫管理・受発注・ERP)との連携の要否
④ BtoC直販とBtoB卸売の両立(掛け払い決済・見積機能が必要かどうか)
⑤ 既存の営業チャネル(商社・代理店)とのバッティング管理

これら5つのうち、1つでも当てはまる場合は、「月額費用が安い順」に選ぶアプローチでは足りません。
まずは自社の販売モデルと体制を整理してから、プラットフォームの比較に入る。これが実務的な順序です。

銀行員時代に製造業の法人営業を担当していた頃から感じていたことですが、製造業は「モノを作る力」が強い一方で、販売チャネルの設計を後回しにしがちです。
ECプラットフォームの選定も同じで、「とりあえず無料で始められるやつ」という入り口で決めてしまい、半年後に「これではBtoB取引ができない」「在庫管理が二重入力になっている」と気づく。
こうなると、プラットフォームの移行コストが想像以上にかかります。

だからこそ、この記事では「料金比較」の前にプラットフォームの3タイプの違い製造業特有の条件分岐を整理し、その上で数字の比較に入ります。

ネットショッププラットフォームは3タイプ。まず自社がどこに当てはまるか整理する

EC比較で混乱する原因の一つは、そもそもプラットフォームの「種類」が違うのに同じ土俵で比べてしまうことです。
Shopify・BASE・STORES・カラーミーショップ・makeshop・EC-CUBEは、大きく3つのタイプに分類できます。

EC3タイプを自由度と運用負荷で比較した図
3タイプは「カスタマイズ自由度」と「運用負荷」のトレードオフ関係にあり、自社の体制で最適ゾーンが決まります。

ASP型(BASE・STORES・カラーミーショップ)の特徴と向いている企業

ASP型は、サーバー管理・セキュリティ・システム更新をプラットフォーム側がすべて担当してくれるタイプです。
アカウントを作って商品情報を登録すれば、すぐにネットショップが開設できます。

ASP型が向いている企業
・Web担当者がいない(経営者が兼務している)
・初期費用をできるだけ抑えたい
・まずはテスト販売から始めたい
・商品数(SKU)が少なめ(50点未満が目安)

一方で、デザインやカスタマイズの自由度はテンプレートの範囲に限定されやすく、基幹システムとのAPI連携が弱い傾向があります。
BASEやSTORESは無料で始められる手軽さが強みですが、月商が伸びるにつれ手数料の累積が膨らむ構造です。この点は後ほど数字で検証します。

ASP型ECプラットフォームの強みと限界の天秤図
ASP型は手軽さが最大の強みですが、月商が伸びると手数料の累積とカスタマイズの限界が重くなります。

グローバルプラットフォーム型(Shopify・makeshop)の特徴と向いている企業

Shopifyは公式発表で175カ国以上での利用、50以上の言語・130以上の通貨への対応が案内されているグローバルプラットフォームです。
makeshopも高機能ASP型として中堅企業向けに位置づけられており、SEO・メルマガ・広告連携などの集客機能が標準で組み込まれています。

このタイプの最大の強みは「アプリやAPI連携で機能を拡張できる」ことです。
Shopifyの場合、卸売用アプリ、カスタムオプション管理、定期購入、在庫管理の外部連携など、製造業が必要とする機能を後から追加できます。

Shopifyのコア機能とアプリ拡張の構造図
Shopifyはコア機能がシンプルで、製造業に必要な機能をアプリで後付けできる拡張型のアーキテクチャです。

グローバルプラットフォーム型が向いている企業
・月商が100万円を超えてきた、またはその見込みがある
・BtoB卸売やD2C(メーカー直販)を視野に入れている
・基幹システム(在庫管理・ERPなど)との連携が必要
・将来的に越境EC(海外販売)を検討している

月額費用はかかりますが(Shopify Basicは2026年時点で月額4,850円程度)、決済手数料が低い傾向にあるため、月商が一定規模を超えるとASP型よりトータルコストが下がるケースが多く見られます。

正直なところ、私自身も最初は「Shopifyは海外向けのサービスだから、日本の中小企業には合わないのでは」と思っていた時期がありました。
しかし実際に製造業の支援でShopifyを使い始めると、日本語サポートの対応速度やアプリの充実度は、国内ASP型と比べても遜色ないレベルだと感じています。

オープンソース型(EC-CUBE)の特徴と向いている企業

EC-CUBEは無料でダウンロードでき、プラットフォーム利用料がかかりません。
カスタマイズの自由度は6社の中で最も高く、「自社の業務フローに完全に合わせたECサイト」を構築できるのが特長です。

ただし「無料」はプラットフォーム利用料だけの話です
EC-CUBEでは、サーバーの契約・セキュリティ管理・システムのアップデート・バグ対応をすべて自社(または外部委託)で負担しなければなりません。
サーバー代(月額1,000〜5,000円程度が目安)に加え、保守を外注すると月額50,000〜150,000円程度が相場の目安とされています。高度なカスタマイズには数十万円単位の開発費がかかることもあり、条件次第で大きく変動します。

社内にエンジニアがいて、完全なカスタマイズ自由度と所有権を重視するならEC-CUBEは有力な選択肢でしょう。
しかし、Web担当者がいない中小製造業が「無料だから」という理由で選ぶと、運用の総コストがASP型を上回るケースも少なくありません。

EC-CUBEの隠れコストを氷山図で可視化
EC-CUBEは利用料0円でも、水面下のコストが積み重なると総額はASP型を超えることがあります。

3タイプの違いを整理した早見表

比較項目ASP型(BASE・STORES・カラーミー)グローバル型(Shopify・makeshop)オープンソース型(EC-CUBE)
初期費用0円〜3,300円0円〜11,000円0円(※サーバー代は別途)
GPLライセンス版の場合
月額費用0円〜4,950円4,850円〜55,000円以上0円(※保守費は別途)
サーバー管理プラットフォーム側プラットフォーム側自社(または外注)
カスタマイズ自由度テンプレート範囲内アプリ・API連携で拡張可完全自由(要エンジニア)
基幹システム連携限定的(CSV中心)API連携に対応完全対応(要開発)
BtoB機能弱い傾向アプリで追加可開発次第で対応可
向いている企業テスト販売・少SKU・兼務体制成長フェーズ・BtoB併用・越境EC大規模・社内エンジニアあり

まず自社が3タイプのどこに当てはまるかを決めるのが、プラットフォーム比較の出発点です。
タイプが決まれば、比較すべき候補が2〜3社に絞られ、手数料やコストの比較が意味を持つようになります。

Shopify・BASE・STORES・カラーミーショップ・makeshop・EC-CUBEの手数料を比較する

ここからは、6つのプラットフォームの料金体系を横並びで比較します。
ただし、料金は各社の改定・為替変動・契約プランで変わる可能性があるため、以下はすべて2026年時点の参考値です。正式な金額は各社の公式サイトで確認してください。

料金体系の一覧比較表

プラットフォーム初期費用月額費用決済手数料販売手数料(サービス利用料)
Shopify(Basic)0円約4,850円Shopify Payments利用時は低水準(※プラン・カード種別で変動)
外部決済時は約2%+トランザクション手数料
なし
BASE(スタンダード)0円0円3.6%+40円/件3.0%(合計6.6%+40円/件)
BASE(グロース)0円16,580円2.9%なし
STORES(フリー)0円0円5.5〜6.5%なし(決済手数料に含む)
STORES(スタンダード)0円3,300円(年契約)3.6〜4.6%なし
カラーミーショップ(レギュラー)3,300円4,950円2.99%〜なし
makeshop(プレミアム)11,000円13,750円各決済方法により異なるなし
EC-CUBE0円(※サーバー代別途)0円(※保守費別途)決済代行会社との契約次第なし

※上記の料金はすべて2026年時点の参考値です。最新の料金は各社公式サイトをご確認ください。

この表だけ見ると、BASEスタンダードプランが「初期費用0円・月額0円」で最も安く見えるでしょう。
しかし、実際に毎月かかるコストは「月額費用+手数料の合計」で比較しなければ意味がありません。

月商30万・100万・300万円で試算したトータルコスト

主要4プラットフォームについて、月商別のトータルコスト(月額費用+手数料)を試算しました。
なお、決済手数料はカード種別やプランで変動するため、以下の数値はシミュレーション用の参考値です。実際の見積もりとは差が出る場合があります。

月商別トータルコスト試算(参考値)

月商BASE スタンダード(6.6%+40円/件)BASE グロース(月額16,580円+2.9%)Shopify Basic(月額4,850円+低率手数料)カラーミー レギュラー(月額4,950円+2.99%)
30万円約19,800円+件数×40円約25,280円約5,750〜7,850円約13,920円
100万円約66,000円+件数×40円約45,580円約7,850〜14,850円約34,850円
300万円約198,000円+件数×40円約103,280円約13,850〜34,850円約94,650円

※Shopify Basicの手数料幅は、Shopify Payments利用時(低率)と外部決済利用時(約2%)の差を反映しています。
※BASEスタンダードの「件数×40円」は、客単価5,000円の場合は月商30万円で60件=2,400円程度の加算になります。
※makeshop・EC-CUBEは決済方法の選択肢が多く一律の試算が困難なため、この表では省略しています。

この試算から見えること
・月商30万円の段階で、すでにBASEスタンダード(約2万円)とShopify Basic(約6,000〜8,000円)の間に約1万円以上の差が出ている
・月商100万円になると、BASEスタンダードの手数料は約6.6万円。Shopify Basicの数倍の水準に膨らむ
・月商300万円では、BASEスタンダードの約20万円に対し、Shopify Basicは約1.4〜3.5万円(Shopify Payments利用時)。差額は月間15万円以上になる計算

BASEとShopifyの月商別コスト逆転グラフ
月商が増えるほどBASEとShopifyのコスト差は広がり、月商300万円では月15万円以上の差になります。

「BASEは無料だから最安」が正しくないケース

BASEは確かに「月額0円で始められる」ことが最大の強みです。
月商が小さいテスト販売の段階では、固定費がかからない分、他のどのプラットフォームよりも低コストで運用できるでしょう。

しかし、月商が20万円を超えたあたりから逆転が起きます
BASE自身が公式サイトで「月商20万円を超えるとグロースプランの方が有利になる」と案内しています。

さらに見落としやすいのが、Shopifyとの比較では月商が伸びるほど差が広がるという構造です。
月額0円のBASEと月額4,850円のShopify。表面上はBASEが安く見えますが、Shopify Paymentsを利用した場合の決済手数料は他プラットフォームより低い水準に設定されています。
Shopify Payments利用時であれば、月商が30万円を超えた時点でトータルコストはShopifyの方が下回る傾向があります。

「月額費用の安さ」と「トータルコストの安さ」はまったく別の話です。
プラットフォームを選ぶ際は、自社の月商予測を3パターン(楽観・中庸・悲観)で立て、それぞれでトータルコストを試算してみてください。
この手順を踏むだけで、「後から手数料が膨れた」という失敗はかなり防げます。

月商3シナリオでEC費用を試算するテンプレート
楽観・中庸・悲観の3パターンでトータルコストを試算すると、プラットフォーム選定の判断がブレにくくなります。

実際に私が支援してきた鋳物メーカーのケースでは、Shopifyへの切り替えによって自社ECの売上が大きく伸びた結果、手数料率の低さが月間のコスト削減にも直結しました。
鋳物製造業のShopify × Web広告の事例では、成約率の改善とあわせて売上8倍を達成した経緯を紹介しています。

製造業がプラットフォームを選ぶときの条件分岐

料金の比較ができたら、次は「自社の条件に合うのはどれか」を絞り込む段階に入ります。
プラットフォーム選びでは、月商規模・販売形態・社内体制の3つの軸で条件分岐すると判断がブレにくくなります。

月商規模で絞る(50万未満 / 50万〜500万 / 500万超)

月商50万円未満(テスト販売・立ち上げ期)

この段階では固定費を最小化するのが合理的です。
BASEスタンダードプラン(月額0円)またはSTORESフリープラン(月額0円)が候補になります。
手数料率は高めですが、月商が小さいうちは実額としてそこまで負担になりません。
「まず売れるかどうかを検証する」フェーズであれば、この選択で問題ないでしょう。

月商50万〜500万円(初期成長〜本格運用期)

ここが最も判断の分かれ目になるゾーンです。
月商100万円を超えたあたりから、手数料の差が月額数万円単位で効いてくるため、トータルコストの試算が欠かせません。

  • Shopify Basic(月額4,850円+低率手数料)が、コストと機能のバランスで有力
  • カラーミーショップ(月額4,950円+決済手数料2.99%〜)も、販売手数料0円で同等レベル
  • BASEグロースプラン(月額16,580円+2.9%)は、BASEに慣れている場合の移行先
  • makeshop(月額13,750円)は、SEOや集客機能を標準で使いたい中堅企業向け

月商500万円超(多チャネル・大規模運用期)

この規模になると、手数料の数%の違いが月間数万円〜十数万円の差になります。
同時に、基幹システムとの連携大量SKUの一括管理カスタムレポートといった高度な機能要件が出てくるため、プラットフォームの拡張性が選定の軸に変わります。

Shopifyの上位プラン(月額29,800円程度〜)や、makeshopのエンタープライズプラン(月額55,000円以上)が検討対象になるでしょう。
社内にエンジニアがいる場合は、EC-CUBEで完全カスタマイズする選択肢も現実的です。

月商規模別のEC候補を絞る分岐フロー図
月商規模で候補を3社以内に絞り込んでから、販売形態と社内体制で最終判断します。

BtoC直販か、BtoB卸売か、両方か

販売形態による分岐は、見落とされやすい割に影響が大きい項目です。

BtoC直販がメインの場合は、消費者向けのUI・決済・配送フローが整っているプラットフォームを選べば問題ありません。
BASE・STORES・Shopify Basicのいずれも対応可能です。

判断が難しくなるのはBtoB卸売が絡む場合です。

BtoB取引で求められる機能(ASP型では不足しやすい)
・顧客企業ごとの個別価格設定(卸価格)
・見積書・注文書の自動生成
・掛け払い決済(請求書払い・銀行振込・手形)
・大ロット発注への対応
・複数購買者による承認ワークフロー

BASEやSTORESは消費者向けの即時決済(クレジットカード・キャリア決済など)を前提に設計されており、企業間取引で広く使われている「掛け払い」には標準機能では対応していないケースが多いのが実情です。

BtoCとBtoBの必要機能をベン図で比較
BtoC直販とBtoB卸売では必要な機能が異なり、両方を扱う場合はBtoB側の要件をカバーできるプラットフォームが必要です。

BtoB卸売を本格的に行うなら、Shopifyで卸売用アプリを追加する方法か、別途BtoB専用のシステムを構築する方法が現実的でしょう。
BtoC直販とBtoB卸売を「同じプラットフォーム内で両立させるか、別々のストアを立てるか」は、事業規模と社内体制によって判断が分かれるところです。

以前、Shopify ECで商圏を全国に拡大した総合卸売業の事例でも、「どの販売チャネルをEC化するか」の設計段階で時間をかけました。
販売形態の整理は、プラットフォーム選定の前に済ませておくべき工程です。

Web担当者がいるか、経営者が兼務しているか

ここは意外と軽視されがちですが、経験上、運用体制がプラットフォームの「使いこなし度」を左右する場面を何度も見てきました。

Web担当者がいない(経営者が兼務している)場合、操作画面のわかりやすさとサポート体制の手厚さが最優先になります。
BASEやSTORESは直感的な操作で商品登録から販売開始まで進められるため、ITリテラシーに自信がない方でも扱いやすいでしょう。

Shopifyは高機能な分、管理画面の操作やアプリの選定で一定の学習コストがかかるのは事実です。
ただし、日本語サポートは平日に対応しており、チャットでの返答も比較的迅速です(2026年時点で平日10:00〜16:30対応、チャットボットは1〜2分程度で返答)。

支援先からのフィードバックを聞いていると、「最初は少し難しく感じたが、1〜2週間で慣れた」という声が多い印象です。
逆に、EC-CUBEはWeb担当者がいない企業には現実的ではないと考えています。サーバー管理・セキュリティ対応・バージョンアップのすべてが自己責任になるため、運用が止まってしまうリスクが高いからです。

外部パートナーに運用を委託する場合の判断軸
委託先の制作会社がどのプラットフォームに強いかも、選定に影響します。
Shopify構築の実績が豊富なパートナーならShopifyを、BASEやカラーミーショップに特化しているならそのプラットフォームを選ぶ方が、立ち上げも運用もスムーズに進みます。
「プラットフォームを先に決めてからパートナーを探す」のではなく、「信頼できるパートナーが得意なプラットフォームを選ぶ」という逆の順番も、実務ではよくある判断です。

実際に私が支援した食品メーカーの場合も、Shopify × Amazonという組み合わせで販路改革を進めましたが、最初の判断基準は「どのプラットフォームなら、弊社が継続的にサポートできるか」でした。
食品メーカーのShopify EC × Amazonの事例では、Amazonベストセラー獲得まで伴走した経緯を紹介しています。

製造業で見落としやすいEC選定の落とし穴

プラットフォームの料金比較と条件分岐ができたら、次に押さえておきたいのが「選んだ後に後悔するパターン」です。
ここで紹介する失敗パターンは、どれも私が実際の支援現場で繰り返し目にしてきたものです。

手数料の「見えないコスト」を月商別に検証する

前のセクションで月商別のトータルコスト試算を見ていただきましたが、実はあの試算にも含まれていないコストがあります。

  • 振込手数料:売上金を銀行口座に移す際にかかる。250〜750円/回が相場で、月に複数回振り込むと積み重なる
  • 有料テーマ・有料アプリの費用:Shopifyのアプリは月額課金型が多く、3〜5個入れると月額数千円〜1万円程度の追加コストになる
  • 決済方法ごとの手数料差:クレジットカードとコンビニ決済では手数料率が異なる。客層によって決済方法の比率が変わるため、実際の手数料率は「公式の最低率」より高くなりがち

見積もりの段階では「月額費用+決済手数料」だけで比較しがちですが、実際に運用が始まると、振込手数料・アプリ課金・決済方法の偏りで月額数千円〜2万円程度は上振れすることがあると見ておいた方が安全です。

EC運用の想定コストと実際のコスト差の積み上げ図
見積段階では見えにくい振込手数料・有料アプリ・決済方法の偏りで、実際のコストは想定より上振れします。

「なんとなく安そうだから」で選んで、半年後に「思ったよりコストがかかっている」と気づく。
手数料周りで最も多い後悔のパターンです。

プラットフォーム移行は想像以上に難しい

「とりあえず無料のBASEで始めて、売れたらShopifyに移行すればいい」
この考え方自体は間違っていませんが、移行の実際のコストと手間を過小評価しているケースが目立ちます。

以前、ある金属部品メーカーから「BASEで1年半運用してきたが、ShopifyへEC移行したい」という相談を受けたことがあります。顧客データの形式変換だけで想定の倍の工数がかかり、URLの301リダイレクト設定漏れで一時的に検索流入が半減しました。このとき改めて感じたのは、「移行コストは見積もりの1.5倍は見ておくべきだ」ということです。

プラットフォーム移行で発生する典型的な問題
顧客データの互換性:BASEで蓄積した顧客情報(メールアドレス・購入履歴・配送先)を新プラットフォームに移すとき、データフォーマットの違いで手動調整が必要になる
SEO評価の喪失:URLが変わると、Googleに蓄積された検索評価がリセットされる。301リダイレクトを正確に設定すれば引き継げるが、設定漏れがあると検索順位が大幅に下がる
商品レビューの消失:旧プラットフォームで蓄積されたレビューは、移行先では基本的に再現できない。新プラットフォームでは「レビューゼロ」からのスタートになる
決済システムの再契約:決済プロバイダーとの再契約が必要になるケースがあり、一時的に販売が停止するリスクがある

移行作業を外注する場合、規模にもよりますが数十万円単位の費用がかかることも珍しくありません
しかも移行期間中は売上が一時的に落ちる場合もあるため、その機会損失も含めると、実質的なコストはさらに膨らみます。

私の経験では、「3年間は同じプラットフォームで運用する」という前提で最初に選ぶ方が、結果的にトータルコストは安くなるケースがほとんどでした。
「とりあえず」で始めるのはテスト販売としては正解ですが、本格運用に入る前の段階で、移行コストまで織り込んだ判断をしておくことを強くおすすめします。

EC移行で同時発生する4つのリスクの放射図
プラットフォーム移行では4つのリスクが同時に発生するため、最初の選定で「3年使える」プラットフォームを選ぶことが重要です。

移行リスクを最小化するための実務的な対策としては、最初から独自ドメインを設定しておくことが挙げられます。
独自ドメインさえ持っていれば、プラットフォームを変えてもドメインという「住所」は維持できるため、SEO評価やブランド認知のダメージを抑えられます。

BtoB機能が足りない状態で始めると何が起きるか

製造業の経営者から「既存の取引先にもECで発注してもらいたい」という相談を受けることがあります。
発想としては正しいのですが、BtoC向けのプラットフォームでBtoB取引を無理に回そうとすると、現場が混乱します

たとえば、商社や販売代理店への卸売をBASEで始めようとした場合。
取引先が「クレジットカードで即座に決済してください」と求められても、企業間取引の商慣習では請求書払いや銀行振込が主流です。
このミスマッチが生じると、取引先から「使いにくい」と言われて結局は従来の電話・FAX発注に戻ってしまう。こういう展開は、御社では起きていないでしょうか。

BtoB取引をEC化したい場合は、選定段階で「掛け払い決済」「見積機能」「顧客別価格設定」の3つが対応可能かを確認しておいてください。
対応していないプラットフォームを選んでから気づくと、別途システムを追加構築することになり、コストも工期も想定外に膨らみます。

基幹システムとの連携は後付けできない

すでに在庫管理システムやERP(基幹システム)を導入している製造業の場合、ECプラットフォームとの連携は選定段階で確認しておかないと、あとから取り返しがつかない項目です。

連携ができないとどうなるか。

EC経由の注文を手動で在庫管理システムに入力し、在庫数の変動も手動でECに反映する。
いわゆる「二重入力」が日常業務に組み込まれることになります。

注文が月に数件の段階なら手動でも回せるでしょう。
しかし月に数十件、数百件と増えてくると、入力ミスや在庫ズレが頻発し、「在庫あり」で受注したのに実際は欠品していたというトラブルにつながります。

基幹システム連携の確認項目
・ECプラットフォーム側にAPI(外部連携用の接続口)があるか
・自社の在庫管理システムがそのAPIに対応しているか
・対応していない場合、ミドルウェア(中間システム)で接続できるか
・CSV形式のバッチ処理(手動のデータ入出力)で実用上問題ないか

ShopifyはオープンなAPI設計でミドルウェア連携の選択肢が多い一方、BASEやSTORESはAPI機能が限定的で、CSV形式での手動連携が中心になる傾向があります。
EC-CUBEはオープンソースなので理論上は完全連携が可能ですが、実装にはエンジニアリング工数が必要です。

経営戦略の現場で見てきた経験から言うと、「システム連携は後から考えればいい」という先送りが、半年後に月間数万円の手動作業コストとして返ってくるのが典型的な失敗パターンでした。
基幹システムとの連携可否は、プラットフォーム選定の最初の段階で確認しておくことを強くおすすめします。

ECプラットフォーム別の基幹システム連携方式比較
基幹システムとの連携方式はプラットフォームごとに大きく異なり、後から変更するのは困難です。

EC選定の前に社内で整理しておくべきチェックリスト

ここまでの内容を踏まえて、プラットフォーム選定に入る前に社内で整理しておくべき11項目をチェックリストにまとめました。
すべて埋まらなくても構いませんが、少なくとも①②③⑧の4項目が未定のまま選定を進めると、後から方針がブレやすいです。

EC選定チェック11項目の優先度ピラミッド
11項目のうち、最優先の4項目(月商・販売形態・SKU・社内体制)だけは選定前に必ず整理してください。

プラットフォーム選定前の11項目チェックリスト

  • ① 現在の月商と、3年後の売上目標 → これが決まらないとプランの損益分岐点が計算できない
  • ② 販売形態(BtoC直販 / BtoB卸売 / 両方) → BtoBが含まれる場合、必要な機能が大きく変わる
  • ③ 商品数(SKU)とバリエーションの複雑さ → SKUが多い場合、ASP型の在庫管理では限界が出やすい
  • ④ 既存の基幹システム(ERP・在庫管理・受発注)の有無 → 連携できるかどうかが選定を左右する
  • ⑤ 受注生産の有無と納期管理の仕組み → 受注生産モデルなら、カート機能だけでは対応不十分
  • ⑥ 越境EC(海外販売)の計画があるか → ありならShopifyの対応力が強い
  • ⑦ 実店舗の有無と対面販売との連携ニーズ → 実店舗ありならSTORESのPOS連携も選択肢に入る
  • ⑧ Web専任者がいるか、経営者が兼務しているか → 操作の難易度とサポート体制の優先度が変わる
  • ⑨ 初期投資の上限と月額固定費の許容ライン → 月額0円しか許容できないのか、5,000円・15,000円まで出せるのか
  • ⑩ デザイン・ブランディングの自由度をどこまで求めるか → テンプレートで十分か、独自デザインが必要か
  • ⑪ 3年以内にプラットフォームを変える可能性があるか → ありなら、独自ドメインの早期導入とデータ移行手段の確認が必須

このリストは、そのまま社内の検討資料や稟議書の添付資料としても使えます。
経営者が一人で判断するのではなく、営業部門・製造部門・経理部門の担当者も巻き込んで確認するのが理想でしょう。
特に④(基幹システム連携)と⑤(受注生産)は、現場の担当者でないと正確な回答が出ないことが多いです。

無料トライアルで「触ってから決める」のが実務的

チェックリストで候補を2〜3社に絞ったら、実際に管理画面を触ってみるのが最も確実な判断方法です。

Shopifyは公式サイトから無料体験が利用できます。管理画面の操作感、商品登録の流れ、テーマの選択肢を一通り試してみてください。
BASEとSTORESはそれぞれ無料プランでアカウントを開設すれば、本運用に近い環境でテストできます。
カラーミーショップやmakeshopは、公式サイトのデモやチュートリアル動画で操作感を確認できます。

私自身、製造業のクライアントにプラットフォームを提案するときは、必ず2つ以上のサービスを実際に操作してもらってから最終判断をお願いしています
スペック表では差がわかりにくくても、「商品を1つ登録してみる」「決済設定を進めてみる」という体験を通すと、自社に合う・合わないが体感で掴めます。

トライアルで確認すべき3つのこと
・商品登録〜公開までの手順が、自社の担当者レベルで回せるか
・困ったときのサポート窓口に、実際に問い合わせてみて返答速度を確認する
・自社で使いたい決済方法(掛け払い・コンビニ決済など)が設定できるか

Shopifyと他のネットショップ比較でよくある質問

QShopifyは月額費用がかかるのに、BASEやSTORESより安くなることがあるのはなぜですか?

AShopifyの決済手数料はShopify Payments利用時に低い水準に抑えられるため、月商が増えるほどトータルコスト(月額費用+手数料)でBASEやSTORESより安くなる傾向があります。BASEスタンダードプランは手数料が合計6.6%+40円/件かかるため、月商30万円を超えたあたりからShopify Basicの方がトータルコストで下回るケースが多く見られます。

Q製造業がBASEやSTORESでBtoB取引(卸売)を行うことはできますか?

ABASEやSTORESはBtoC(消費者向け)の即時決済を前提に設計されているため、BtoB取引で一般的な掛け払い決済(請求書払い・銀行振込)や顧客別価格設定、見積機能には標準機能では対応していないケースが多いです。BtoB卸売を本格的に行う場合は、Shopifyで卸売用アプリを追加するか、BtoB専用のシステムを別途構築する方法が現実的です。

QEC-CUBEは無料と聞きましたが、本当にコストゼロで運用できますか?

AEC-CUBEのプラットフォーム利用料は無料ですが、サーバー契約(月額1,000〜5,000円程度)、セキュリティ管理、システムの保守・アップデートは自社負担になります。保守を外注すると月額5,000〜15,000円程度が一般的な目安とされており、高度なカスタマイズには数十万円単位の開発費がかかる場合もあります。Web担当者やエンジニアがいない中小企業では、実際の総コストがBASEやSTORESを上回る可能性があります。

QShopifyは海外向けのサービスという印象がありますが、日本語での運用やサポートは問題ないですか?

AShopifyの管理画面は日本語に対応しており、日本語サポートも平日に提供されています(2026年時点で平日10:00〜16:30、チャットボットは1〜2分程度で返答)。日本の中小企業での導入実績も多く、Shopify構築に対応している国内の制作会社も増えています。「海外向け=日本語対応が弱い」という印象は、必ずしも実態に即していません。

Qネットショップのプラットフォームを後から別のサービスに移行するのは簡単ですか?

Aプラットフォームの移行は、実務上かなり手間とコストがかかります。顧客データのフォーマット調整、SEO評価の引き継ぎ(301リダイレクト設定)、商品レビューの消失、決済システムの再契約など、複数の問題が同時に発生します。移行作業を外注すると数十万円単位になるケースもあるため、「3年間は同じプラットフォームで運用する」前提で最初に慎重に選ぶ方が、結果的にトータルコストを抑えられます。

QShopifyで製造業の受注生産モデルに対応できますか?

AShopify単体の標準カート機能だけでは受注生産の全工程をカバーするのは難しいですが、アプリエコシステムを活用することで対応範囲を広げられます。カスタムオプション管理アプリ、見積・提案機能アプリなどを組み合わせれば、注文時の仕様確定から生産スケジュール連携までのフローを構築できます。ただし、複雑な受注生産プロセスの場合は、別途注文管理システムとのAPI連携が必要になる場合もあります。

Q月商がまだゼロの段階でも、最初からShopifyを選ぶべきですか?

A月商がゼロの段階で「まず売れるかどうかを検証したい」のであれば、BASEスタンダードプランやSTORESフリープランの月額0円で始めるのが合理的です。固定費がかからないため、売上が出なくてもコスト負担がありません。ただし、3年以内に月商50万円を超える見込みがある場合は、最初からShopifyを選んでおいた方がプラットフォーム移行の手間とコストを避けられます。自社の売上見通しをもとに判断してください。

Q既存の在庫管理システムとECプラットフォームは連携できますか?

A連携の可否はプラットフォームと既存システムの両方の仕様に依存します。ShopifyはオープンなAPI設計でミドルウェア連携の選択肢が多く、在庫管理システムとの自動連携が比較的構築しやすいです。BASEやSTORESはAPI機能が限定的で、CSV形式の手動データ入出力が中心になる傾向があります。EC-CUBEはオープンソースのため理論上は完全連携が可能ですが、実装にはエンジニアの開発工数が必要です。選定前に、自社の在庫管理システムのベンダーに「Shopify(またはBASE等)との連携実績があるか」を確認するのが確実な方法です。

プラットフォーム選定は「月額費用の安さ」ではなく「3年間のトータル設計」で決める

ECプラットフォームの比較とは、自社の月商規模・販売形態・商品特性・社内体制という複数の条件に照らして、3年間のトータルコストと運用負荷が最も小さくなる選択肢を見極めるプロセスです。

「月額費用が安い」だけで選ぶと、手数料の累積、移行コスト、BtoB機能の不足、基幹システムとの断絶といった問題が後から噴出します。
かといって「高機能なプラットフォーム」を選んでも、月商が小さい段階では固定費が重荷になる。

大事なのは、自社の「今」と「3年後」の両方を見据えて、条件に合うプラットフォームを選ぶことです。
この記事のチェックリストと料金試算を使って、まずは社内で整理するところから始めてみてください。

月額費用比較と3年トータル設計の対比図
月額費用の安さだけで選ぶと後悔につながりやすく、3年間のトータル設計で選ぶことが成長への近道です。

御社の条件に近い事例として、工具・金物メーカーがSEOと直販ECで価格競争を脱却した事例も参考になるかもしれません。
プラットフォーム選定だけでなく、ECを「高利益な直販チャネル」として設計し直した取り組みです。

また、ECサイトの構築だけでなく、自社のホームページ全体の制作パートナー選びに迷っている方は、製造業・商社向けのホームページ制作会社の選び方もあわせてご覧ください。
制作会社の実績を見分ける基準を、製造業の経営者向けに整理しています。

この記事の要点
・プラットフォームは「ASP型」「グローバル型」「オープンソース型」の3タイプに分かれる。まず自社がどこに当てはまるかを整理する
・月額費用だけで比較すると判断を誤る。月商規模ごとのトータルコスト(月額+手数料)で比較するのが正しい手順
・製造業はBtoB機能、基幹システム連携、受注生産対応の3つを選定段階で確認しておく
・「とりあえず無料で始めて、後で移行」はコストが高くつく。3年間の運用を前提に選ぶ方がトータルで安くなる
・11項目のチェックリストを社内で埋めてから、候補を2〜3社に絞って無料トライアルで触ってみる

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