求人媒体の請求額だけを採用人数で割ると、店長の面接時間や応募者への連絡工数が見えません。反対に、早期退職後の再募集費まで後から足すと、前月と今月で計算条件が変わります。
飲食店の採用単価は、媒体費だけを見る数字と、社内工数まで含む数字を分けてください。
さらに、入社後の定着は別の分母で追うと、どこに費用がかかり、何を直すべきかが見えてきます。
採用単価は3つの数字を並べて読む
外部費用採用単価で社外への支出を見て、総採用単価で社内工数を含む負担を見ます。早期退職の影響は、定着採用単価として別に確認します。
飲食店の採用単価は「外部費用」と「総額」の2種類で計算する
飲食店の採用単価は、何を分子へ入れ、誰を分母にするかを先に固定してから計算します。採用担当者ごとに範囲が違えば、同じ店舗でも比較できません。
外部費用採用単価は社外への支払いを入社人数で割る
外部費用採用単価は、求人媒体費や人材紹介手数料など、社外へ支払った費用を入社人数で割ります。式は外部費用÷入社人数です。
この数字は、媒体や採用チャネルの支出を比べるには便利です。
ただし、無料掲載でも応募対応に時間がかかれば、店舗全体の負担が軽いとは限りません。
総採用単価は社内工数費まで含める
総採用単価は、外部費用に社内工数費を足して入社人数で割ります。式は(外部費用+社内工数費)÷入社人数です。
私なら、媒体の良し悪しを判断するときも総額だけには寄せません。
外部費用採用単価と総採用単価を横に並べると、外部支出と現場負担のどちらが重いかを切り分けられるからです。
分母は「内定承諾者」ではなく、まず実際に入社した人数へそろえると運用しやすくなります。入社が0人の期間は0円とせず、採用単価は算出不能と記録してください。
飲食店の採用単価に含める費用の範囲
飲食店の採用単価に含める費用は、外部費用、社内工数費、入社後費用に分けます。この3区分を先に作れば、制服代や研修費をどこへ置くかで毎月迷いません。
採用費の3区分
| 区分 | 含める例 | 扱い |
|---|---|---|
| 外部費用 | 媒体・紹介・撮影 | 外部費用単価へ |
| 社内工数費 | 原稿・連絡・面接 | 総単価へ |
| 入社後費用 | 制服・研修・健診 | 別欄で管理 |
求人媒体費以外の外部費用
外部費用には、求人広告の掲載費、人材紹介手数料、求人写真の撮影費、採用ページの制作外注費などを含めます。複数店舗で使う撮影素材は、配賦基準を先に決めるのがコツです。
配賦とは、共通費を店舗や職種へ分ける作業です。
応募数、掲載枠数、採用人数のどれで分けるかを決め、結果を見てから有利な基準へ変えないようにします。
店長と採用担当者の面接工数
社内工数費は、作業時間×社内で決めた時間単価で出します。原稿作成、応募確認、電話やメッセージ、面接、合否連絡までを対象にしてください。
時間単価は、給与だけを使うか、会社負担の社会保険料等を含む社内原価を使うかで変わります。
どちらが正解かより、全店舗で同じ基準を続けることのほうが比較には効きます。
細かな計測が難しければ、まず1週間だけ作業時間を記録します。私は、毎回の電話を秒単位で測るより、記録を続けられる単位へ丸めるほうを選びます。
注意入社後費用は採用費と分ける
制服、健康診断、入社研修、研修中の人件費まで追う場合は、オンボーディング費として別欄にします。採用単価へ混ぜると、研修が厚い店舗ほど採用活動が悪く見えます。
正社員とアルバイトは同じ表に混ぜない
飲食店の正社員採用単価とアルバイトの採用単価は、別に集計します。同じ表に合算すると、募集経路や選考工数の違いが数字へ混ざり、改善すべき場所がぼやけるからです。
厚生労働省の令和6年雇用動向調査も、一般労働者とパートタイム労働者を別に定義しています。2024年の「宿泊業,飲食サービス業」では、一般労働者の入職率21.2%・離職率18.1%、パートタイム労働者の入職率33.3%・離職率29.9%でした。

この統計は宿泊業と飲食サービス業の合算で、個別店舗の採用単価を示すものではありません。ただ、公的統計でも就業形態を分けているため、自店でも別集計にする理由は明確です。
出典: 厚生労働省「令和6年 雇用動向調査 主な用語の定義」
正社員用
アルバイト用
最低限、店舗、職種、雇用区分、採用チャネル、集計期間の5項目を持たせます。母数が少ない店舗は月次で結論を出さず、四半期または6か月で比べてください。
推奨一店舗・一職種から始める
全店の過去データを一度に整えると、定義合わせだけで止まりがちです。今募集している一店舗・一職種・一雇用区分を選び、次の採用期間から記録すると前へ進みます。
飲食店の採用単価を架空例で計算する
飲食店の採用単価を、3か月間で正社員を募集した架空の店舗として計算します。以下は相場や平均ではなく、式を理解するための仮定です。
仮定は、求人媒体費約24万円、写真撮影・原稿外注費約6万円、店長と本部の社内工数費約10万円、入社4人、90日後在籍3人とします。
入社時点と90日後の計算結果
| 指標 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| 外部費用単価 | 約30万円÷4人 | 約7.5万円/人 |
| 総単価 | 約40万円÷4人 | 約10万円/人 |
| 90日定着 | 約40万円÷3人 | 約13.3万円/人 |
外部費用採用単価だけなら約7.5万円/人ですが、社内工数を含めると約10万円/人です。さらに90日後の在籍人数で割ると、約13.3万円/人になります。
この差は「どの数字が正しいか」を争うためのものではありません。
外部支出、現場負担、定着後の成果を別々に読むための3つの窓です。

読み方同じ分子で分母だけを変える
総採用費約40万円を固定し、入社4人と90日後在籍3人で割ります。初期費用を書き換えず、定着による差だけを見られる計算です。
早期退職は初期費用へ混ぜず、定着単価で見る
早期退職が出ても、過去の初期採用単価へ費用を後付けしません。
入社時点の総採用単価を残し、90日または6か月の定着採用単価を別に並べます。
観測日は会社で決める管理日であり、90日が公的な統一基準という意味ではありません。繁忙期をまたぐか、試用期間と合うかを見て一つに固定します。
厚生労働省が公表した令和4年3月卒業者の3年以内離職率では、「宿泊業,飲食サービス業」が高卒64.7%、大卒55.4%でした。これは新規学卒者だけを対象とした3年の統計であり、中途採用やアルバイトを含む店舗全体の率ではありません。
公的資料でも入社後の離職を別期間で追っていることは、採用決定時点だけで評価を終えない理由になります。ただし、この数値を自店の採用単価へ直接掛ける使い方は避けてください。
出典: 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」
警告再募集費を過去月へ戻さない
退職後に発生した求人媒体費や面接工数は、次の採用期間の費用として記録します。過去の表へ戻すと、締めたはずの採用単価が毎月変わり、媒体比較に使えません。
採用単価が悪化した場所を応募から定着まで追う
採用単価が上がったとき、求人媒体費をすぐ削るのは早計です。応募、面接実施、入社、定着のどこで人数が減ったかを先に見ます。
応募が少ないなら求人の入口を確認する
応募が少ない場合は、募集職種、勤務地、時間帯、賃金、仕事内容が候補者へ伝わっているかを確認します。媒体追加より先に、求人票・採用サイト・応募後対応を直す順番で入口を点検すると、原因を切り分けやすくなります。
求める人物像が抽象的なら、必須条件・歓迎条件・育成前提を分ける方法も確認してください。採れない条件を盛るほど、応募対象は狭くなります。
面接実施率が低いなら応募後対応を見る
応募数はあるのに面接へ進まない場合は、返信までの時間、連絡手段、候補日時、面接場所を記録します。面接設定数ではなく実施数を数えると、日程調整での離脱が見えます。
応募前の不安が繰り返されるなら、採用サイトのよくある質問へ条件を明記すると、応募者と店舗の確認往復を減らしやすくなります。
入社・定着で落ちるなら求人情報と現場を合わせる
内定後の辞退や早期退職が目立つ場合は、求人情報と面接説明、実際の勤務条件を照合します。厚生労働省は、求人等に関する情報を正確かつ最新に保ち、虚偽または誤解を生じさせる表示をしない義務を案内しています。
法律上の個別判断は専門家や所管窓口へ確認が必要ですが、運用では業務内容、就業場所、賃金、勤務時間帯を求人原稿と現場で合わせるところから始められます。
判断私が採用単価を見るなら、一番高い媒体ではなく、人数が大きく減った工程から直します。費用を削っても、詰まりが別の工程にあれば採用人数まで減りかねません。
採用ページの情報不足が原因なら、中小企業の採用サイトで先に載せるコンテンツを使って不足項目を整理できます。媒体だけでなく受け皿と応募フォームまで一体で設計した例は、採用基盤を構築した事例も参考になります。
集計表を3週間で作る実務手順
過去数年分を掘り起こす前に、次の3週間で記録方法を作ると無理がありません。完成度より、同じ定義で次回も記録できることを優先します。
- 1週目: 店舗、職種、雇用区分、チャネル、分母、定着基準日を決める
- 2週目: 原稿、応募対応、面接、連絡に使った時間を担当者別に測る
- 3週目: 外部費用と社内工数費を入力し、応募から定着までの人数を並べる
管理表の列は、集計期間、店舗、募集職種、雇用区分、採用チャネル、外部費用、社内工数、応募数、面接実施数、入社数、基準日在籍数です。ここから外部費用採用単価、総採用単価、定着採用単価を計算します。
一つのセルに複数店舗をまとめないでください。店舗名と職種が分かれていれば、あとからチャネル別や雇用区分別に集計できます。
運用毎月見る数字と四半期で見る数字を分ける
外部費用と応募対応時間は毎月記録し、採用単価の判断は母数がそろう四半期や6か月で行います。記録の頻度と経営判断の頻度を分けると、少人数の月に振り回されません。
飲食店の採用単価でよくある質問
Q飲食店の採用単価はどう計算しますか?
A飲食店の外部費用採用単価は外部費用を入社人数で割り、総採用単価は外部費用と社内工数費の合計を入社人数で割ります。
Q求人媒体費だけを採用人数で割ってもよいですか?
A求人媒体費だけの採用単価も媒体比較には使えます。ただし、店長や採用担当者の工数を含む総採用単価を併記すると、店舗全体の負担も判断できます。
Q面接工数の人件費はどう出しますか?
A面接工数の人件費は、原稿作成、応募対応、面接、合否連絡の作業時間に、社内で統一した時間単価を掛けて出します。
Q早期退職者の採用費はどこへ入れますか?
A早期退職者が出ても初期の総採用単価は書き換えず、90日や6か月などの基準日在籍人数で割った定着採用単価を別に記録します。
Q正社員とアルバイトの採用単価は合算できますか?
A正社員とアルバイトの採用単価は合算せず、雇用区分ごとに分けます。店舗、職種、採用チャネル、集計期間も同じ条件で比較してください。
Q採用人数が少ない月はどう評価しますか?
A採用人数が少ない店舗は毎月の費用と工数を記録し、採用単価の比較は四半期または6か月で行うと、一人の増減による振れを抑えられます。
飲食店の採用単価は一店舗・一職種から見直す
飲食店の採用単価とは、同じ期間・店舗・職種・雇用区分で採用費と入社人数を対応させる管理指標です。
まず一店舗・一職種を選び、外部費用、社内工数、入社人数、基準日在籍数を記録してください。
媒体費を下げる判断は、その後で十分です。
私は、採用単価を安く見せる表より、次に直す工程が分かる表のほうが経営に役立つと考えています。数字の目的は評価ではなく、採用活動の次の一手を決めることです。
相談採用導線と計測表を一緒に整える
求人媒体、採用ページ、応募フォーム、返信体制の数字が分散していると、自社だけでの整理が難しい場合があります。採用導線の見直しから計測項目の設計までつなげたい場合は、ノーサイドへご相談ください。

