「アクセスはちゃんと取れている。なのに、注文がほとんど入らない」。
ネットショップを運営していて、この壁にぶつかったことのある方は多いはずです。広告費を積み、SNSも更新している。
それでも、訪問数の伸びほど売上が伸びていかない。
結論を先に書きます。アクセスがあるのに売れない時の原因は、ほとんどの場合「集客」ではなく「転換率」と「客単価」の側にあります。
にもかかわらず多くの会社は、最初に広告予算を増やそうとしがちです。それが効かない理由から順に整理していきます。
この記事は、原因の切り分け方、商品ページや購入導線で起きていることの直し方、信頼性の見せ方、そして改善の進め方までを 1 本でまとめたものです。読み終わるころには、自社サイトのどこから手をつけるべきかの優先順位がついた状態を目指しています。
要点この記事で得られること
・売れない原因を「集客/転換率/客単価」の 3 つで切り分けて、優先論点を 1 つに絞れるようになる
・GA4 で「どこで離脱しているか」を 30 分程度で診断する手順がわかる
・商品ページ・購入導線・信頼性・流入の質を、自社サイトに当てはめてチェックできる
・施策を打つ順番と、焦って広告予算を増やすときの注意点が整理できる
「アクセスはあるのに売れない」は売上の式に当てはめると原因が見える
最初に押さえておきたいのは、ネットショップの売上は次の式で分解できるという点です。
売上 = 訪問数(アクセス数) × 転換率(CVR) × 客単価
当たり前のように見えますが、この式に自分のショップの数値を入れたことがある方は、思ったほど多くありません。
アクセスはあるのに売上が伸びない、という状況は、3 つの変数のうち真ん中の「転換率」が極端に低いか、右端の「客単価」が想定よりも低い、そのどちらかであることが多いです。
売上 = 訪問数 × 転換率(CVR) × 客単価で分解する
分解の手順はシンプルです。GA4 や利用中の EC カートの管理画面から、月間訪問数・購入件数・売上金額を拾い出し、それぞれを式に当てはめてください。
たとえば月間訪問が 5,000、購入件数が 25、売上が約 25 万円なら、CVR は 0.5%、客単価は約 1 万円となります。
ここで CVR が 1% を下回っているのなら、いま広告で訪問数を倍にしても売上はほぼ倍にしかなりません。仮にクリック単価が変わらないとすれば、広告費に対する効率は同じです。
対して、CVR を 0.5% から 1.5% に持ち上げることができれば、訪問数が同じでも売上は 3 倍に伸びます。「売れない」と感じた時にまず疑うべきは集客ではない、というのはこういう構造です。

CVR の業界目安と、自社サイトをどの数値と比較すべきか
EC サイトの平均 CVR は、調査によって 1% 前後から 3% 前後まで幅があります。
商材カテゴリでも差が大きく、ギフトやヘルスケア、アパレルでは 4% を超える例もある一方、家具や建材のような高単価・検討期間の長い商材では 2% を下回るのも珍しくありません。
| 商材カテゴリの傾向 | CVR の目安 | 留意点 |
|---|---|---|
| ギフト・ヘルスケア・アパレル | 3〜4% 前後 | 季節要因と検索意図が強いカテゴリ |
| 食品・日用消耗品 | 2〜3% 前後 | リピート購入の比率で大きく変わる |
| 家具・建材・高額耐久財 | 1〜2% 前後 | 検討期間が長く、初回 CVR は低くなりがち |
| BtoB・産業材 | 1% 前後 | 問い合わせ件数で測るほうが適切な場合あり |
大切なのは、業界平均と比べて一喜一憂することではなく、「自社の過去 6 ヶ月の CVR と比べてどう変化しているか」を基準に置くことです。外部の数値はあくまで「桁が違うかどうか」を確認する物差し。
CVR が 0.3% なのか、3% なのかで打つ手はまったく変わってきますが、1.2% か 1.5% かの差は、多くはノイズの範囲です。

GA4 で「どこで離脱しているか」を 30 分で診断する手順
原因の切り分けに必要なデータは、ほぼ Google アナリティクス 4(GA4)で取れます。ここでは、まだ GA4 を触り慣れていない方でも 30 分程度で必要な数値が把握できる手順を整理します。
なお、2026 年 5 月時点では、GA4 上で従来「コンバージョン」と呼ばれていた指標が「キーイベント」に名称変更されました。設定画面で「コンバージョン」という項目を探しても見つからないのは、これが理由です。
キーイベント(旧コンバージョン)と購入経路レポートの開き方
診断の出発点は、購入をキーイベントとして正しく計測できているかどうかの確認です。これが抜けていると、その後の数値はすべて当てになりません。
メモキーイベントと CVR の確認手順(GA4・2026 年 5 月時点)
① 左メニュー「管理」→「キーイベント」で purchase(または相当する購入イベント)が「キーイベント」としてオンになっているかを確認
② 左メニュー「レポート」→「ライフサイクル」→「収益化」→「e コマース購入数」で売上・購入数を確認
③ 同じく「収益化」→「購入経路」で、商品閲覧 → カート追加 → 購入手続き開始 → 購入完了の各ステップの遷移率を確認
④ レポート右上の比較機能を使って、デバイス別・流入経路別の CVR を並べて比べる
無料版 GA4 を使っていて、データ量がそこそこある場合は、レポート画面に小さく「サンプリング適用中」のアイコンが出ていないかも見ておきましょう。サンプリングがかかっていると、購入経路の数値が実態とずれます。
詳細に分析したい場合は、データ探索(旧アナリシス)機能を使うか、BigQuery 連携で生データを引く方が確実です。
デバイス別・流入経路別・カート離脱率の確認ポイント
診断のコツは、全体の CVR ではなく、セグメントを切って見ることです。全体では 1.0% でも、PC は 2.0%・スマホは 0.5% と二極化していれば、問題はサイト全体ではなくスマホ最適化に集中しています。
- デバイス別 CVR:スマホがやけに低い場合は、表示崩れ・タップ領域・フォーム入力のいずれかが破綻している可能性が高い
- 流入経路別 CVR:広告経由・自然検索経由・SNS 経由を並べたとき、ある経路だけ極端に低い場合は、その経路の見出しや広告クリエイティブと商品の不一致を疑う
- カート離脱率:購入経路レポートで「カート追加」から「購入手続きの開始」への遷移率が低ければ、カートまわりの導線・送料表示・会員登録要件のどこかにブロッカーがある
- 新規ユーザー CVR と既存ユーザー CVR:差が大きいときは、初回購入の不安を解消する材料(レビュー・実績・返品ポリシー)が不足している
この 4 つを並べて見るだけで、改善すべき領域がほぼ 1 つに絞れます。逆に、これを見ずに「カート画面を作り直そう」「商品写真を撮り直そう」と着手すると、的を外したまま予算と時間を使ってしまうことになります。

商品ページが「買う一歩手前」で止まる原因と直し方
CVR の低さの大半は、商品ページに集約されます。商品ページは、訪問者が「これを買うかどうか」を最終的に決める場所。
ここで判断材料が足りなければ、人はカートに入れずに別タブで競合を比較し始め、そのまま戻ってきません。
画像・スペック・利用シーンが不足していないか
商品ページで一番先に手が入れられる場所が、画像です。調査では、商品画像を 1 枚から 3 枚に増やすだけでも CVR が改善するという報告があり、寄り・引き・利用シーン(使っているところ)の組み合わせが効くとされています。
ズームできるかどうかも、衣料品やアクセサリーなど質感が重要な商材ほど効きます。
買いやすい商品ページの画像構成
・1 枚目:商品の全体像(背景白・パッケージから出した状態)
・2 枚目:寄り・素材感・ディテール
・3 枚目:利用シーン(人が使っている・部屋に置いている等)
・4 枚目以降:サイズ比較(手や定規との対比)・色違い・付属品一覧
離脱されやすい商品ページの典型
・画像が 1〜2 枚で全体像しかない
・利用シーンが想像できない(人や周囲のモノとの対比がない)
・スペック表が文章中に埋もれていて、表組みになっていない
・「商品の良さ」を語る言葉だけが並び、客観的な数値・素材・サイズが書かれていない
サイトの世界観が「安っぽく見える」せいで離脱されているケースもあります。商品自体が良くてもデザインの粗さで信用を失うのはもったいない話で、こちらは ネットショップのロゴやデザインの作り方で具体的な見直し方をまとめています。

送料・在庫・納期を商品ページに先出しする
カゴ落ちの主要因の一つに、「カートに入れたら、想定していなかった送料や手数料が乗っかってきた」というユーザー体験があります。
海外の有名な調査機関(Baymard Institute)も国内の EC 系調査会社も、送料や追加費用がカート離脱要因の上位に来ることでは概ね一致しています。
対策は単純で、送料・在庫・納期を、カート画面ではなく商品ページの目立つ位置に書くことです。「全国一律 X 円」「Y 円以上で送料無料」「お届け目安:注文後 Z 営業日」が、価格のすぐ近くに見えているかどうか。
これが見えていないだけで、迷ったユーザーは静かに離脱します。
注意
送料を「総額表示」までしっかり乗せて見せると一見売れにくく見えますが、購入完了率は逆に上がる傾向があります。
カート画面で初めて送料を見せると、「だまされた」と感じさせやすい。先に見せて納得してもらった方が、結果として歩留まりが良くなります。
レビュー・第三者評価で「ここで買って大丈夫」を伝える
商品ページの最後のひと押しに効くのが、第三者の声です。
レビュー件数の多さを購買判断で重視するユーザーは半数前後にのぼるという調査結果もあり、星の評価だけでなく、写真付きレビュー・購入者の属性(年代・用途)が見えるとさらに効きます。
- レビュー件数が一桁台のうちは、購入者へのフォローメールで「写真付きで感想を投稿いただけませんか」と依頼する
- レビューに対して店舗から返信する運用を作り、サポートの誠実さを可視化する
- 受賞歴・メディア掲載・著名な取引先がある場合は、商品ページ内に控えめに掲載する
- BtoB 商材であれば、導入企業ロゴ・導入実績数を商品近くに置く
製造業の通販を支援していると、「自社の技術力には自信がある」と言う社長ほど、商品ページ上にその裏付けを置いていない、という光景によく出会います。
買う側からすれば、初めて訪れたショップで「この会社は信頼できる」と判断する材料は、ページ上に書いてあることだけ。「言わなくても伝わるはず」は、ネットでは通用しません。
カート〜決済の摩擦を取り除き、カゴ落ちを抑える
商品ページを通過してカートに入れてくれたユーザーは、すでに「買う気」が立っている状態です。にもかかわらず、ここから購入完了までの間で離脱するのが、いわゆるカゴ落ち。
世界的な調査(Baymard Institute 等)では、カート投入後に約 7 割が購入に至らないと長年言われています。
国内の 2025 年実施の調査では 6 割台前半まで改善している報告もあるものの、業態を問わず「カートに入れた人の過半数は買わずに離脱する」という前提で設計しておくのが安全です。

会員登録を強制しない(ゲストチェックアウト)
カート〜決済間でまず疑うべきが、会員登録の強制です。複数の調査で、会員登録を必須にしているサイトに比べ、ゲスト購入(会員登録なしの購入)を許可しているサイトの方がカゴ落ち率が低い傾向が報告されています。
初めて買う人にとって、住所・氏名・メールアドレス・パスワードを設定して、確認メールを開いて、戻ってきて再ログインして、という流れは想像以上に重いものです。
ただし、すべての商材で会員登録を捨てるべきかというと、そうではありません。高単価でリピート購入が前提の商材では、会員制度の方が長期的な客単価が伸びやすいという調査もあり、商品特性での使い分けが必要です。
- 初回購入のハードルを下げたい場合:ゲストチェックアウトを基本に、購入完了後に「次回から早く買えます」と任意の会員登録を案内
- リピート購入や定期購入が前提の商材:会員登録は維持しつつ、ソーシャルログイン(Google・LINE)で入力を削減
- BtoB の商材:請求書払い・見積もり対応が絡むので、会員登録自体はむしろ必要だが、入力項目を最小限に
カート追加ボタンそのものも、見落とされがちな改善ポイントです。色・ラベル文言・配置だけで CVR が動くこともあり、自社通販サイトのカート追加ボタンは何色がおすすめかでも具体例を扱っています。
フォームのスマホ最適化と入力負担の削減
経済産業省「令和 6 年度電子商取引に関する市場調査」(2025 年 8 月公表)によると、2024 年の物販系 BtoC-EC のスマートフォン経由比率は 61.7% で、前年(2023 年)の 58.7% から 3 ポイント上昇しています。
すでに購入の 6 割以上がスマホで行われている状況です。それなのに、購入フォームだけはいまだに PC を前提に設計されているサイトが少なくありません。
- 郵便番号からの住所自動入力(postcode → 都道府県・市区町村)を有効にする
- 電話番号・カード番号・郵便番号などの数字入力欄には、数字キーボードが立ち上がるように
inputmodeを設定する - 必須項目と任意項目を明示し、できる限り任意項目を減らす(誕生日・趣味などは購入後アンケートに回す)
- エラーメッセージは「どの欄を、どう直せばよいか」を一目で示す
- カート画面・入力画面で、トップへ戻るリンクや別カテゴリのナビゲーションを目立たせない(離脱を増やす)
購入直前の不安を解消する手段として、チャット導線も有効です。Shopify を使っているなら、Shopify inbox での問い合わせチャット導入のように、無料アプリで十分に始められます。
表示速度(Core Web Vitals)を改善対象として扱う
表示速度は、商品ページの体験そのものを左右します。
Google の Core Web Vitals では、LCP(最大コンテンツが描画されるまでの時間)2.5 秒以内が推奨値とされ、これを超えると「改善が必要」、4 秒を超えると「不良」と判定されます(2026 年 5 月時点・公式ヘルプより。
最新基準は Google Search Central をご確認ください)。
注意
表示速度の検証は、PageSpeed Insights(無料)で対象 URL を入れるだけで概況が出ます。スマホとパソコンでスコアが大きく異なることがあるため、必ずモバイル側のスコアを確認してください。商品ページの LCP が 2.5 秒を超えているなら、画像の重さ・サードパーティのタグ・テーマの肥大化のいずれかを疑います。
とくに効きやすいのは、画像の WebP 化と適切なサイズへの圧縮、そして使っていない外部スクリプトの整理です。
商品ページに過去のキャンペーン用タグが残っていたり、SNS シェアプラグインが全ページで読み込まれていたりすると、それだけで体感速度は目に見えて落ちます。
決済手段の選択肢を増やす
最後に、決済手段。2026 年 5 月時点でも、ネット購入の決済はクレジットカードが中心ですが、経済産業省のキャッシュレス決済データなどでも示されている通り、コード決済(PayPay・LINE Pay 等)の利用比率は年々伸びてきています。
特に若年層やスマホ中心のユーザーで「自分が使い慣れた決済が選べないと離脱する」傾向が強まっています。
導入の優先順位は、客層に合わせて判断します。20〜30 代中心の B to C なら、まずクレジットカードに加えて主要なコード決済を 1〜2 種類。
法人顧客が一定割合いる場合は、銀行振込・後払い決済も整える。「決済を増やしたら売れた」のではなく、「必要な決済が無いから売れていなかった」というケースが、思っているよりも多いのが実情です。
サイトの信頼性が足りないと、最後の一押しで離脱される
商品ページも購入導線も整っていて、それでも CVR が想定より低い時に最後に疑うべきが、サイト全体から漂う「実在感」や「信頼感」です。
初めて訪れたユーザーは、住所や決済情報を入力する前に「この会社、ちゃんと存在しているのだろうか」を無意識に確認しています。

特定商取引法表記・返品ポリシー・連絡先の見せ方
EC サイトには、特定商取引法に基づく事業者表記が義務付けられており、会社名・所在地・代表者名・電話番号・販売価格・送料・返品条件などを、所定のページにまとめて表示する必要があります。
この義務表記が不十分だと、Yahoo!ショッピングや楽天市場では出店審査が通らないだけでなく、自社 EC でも消費者から見たときの不信材料になります。
- 特定商取引法に基づく表記ページが、フッターから 1 クリックで開けるか
- 返品・交換ポリシーが「条件・期限・送料の負担者」まで具体的に書かれているか(「お問い合わせください」だけは NG)
- 連絡先として電話番号またはメールアドレスが明記され、問い合わせ後の返信目安(営業日数)まで書かれているか
- 住所が実在する事業所か(バーチャルオフィスの場合は、その旨をぼかさず書く方が結果的に信用される)
運営者情報・SSL・お客様の声で「実在感」を出す
義務表記の枠を超えて、もう一歩信頼を稼ぎにいくなら、運営者の顔と背景が見える状態にしておくのがおすすめです。運営者プロフィールページに、社員の写真・経歴・このショップを始めた理由を載せる。
代表者からのメッセージを置く。SNS アカウントへの動線を張る。
こうした要素は、商品ページの数値スペックでは伝えられない「人の気配」を作ります。
技術的なところでは、サイト全体の SSL 化(https 化)はもはや前提です。ブラウザでアドレスバーに鍵マークが出ていないサイトは、「保護されていない通信」と警告が出る場合があり、それだけで離脱要因になります。
また、お客様の声(写真・本名のイニシャル・購入商品付き)をトップページや商品ページに散らしておくと、初訪問のユーザーが安心しやすくなります。
注意
「お客様の声」を自作するのは絶対に避けてください。
景品表示法の優良誤認に該当するリスクがあるうえ、何より読み手はサクラのレビューを敏感に見抜きます。本当の声が少ないなら、まずは購入者へのフォローメールで実名・写真の掲載許可を取りに行く運用を整える方が早道です。
流入の「数」より「質」を疑ったほうがいい場合
ここまで商品ページ・購入導線・信頼性を見直しても CVR が動かない場合、初めて「流入の量ではなく質」に目を向ける段階に来ます。
たくさんの人が来てくれていても、その人たちが「あなたのショップで売っているもの」を本当に必要としていなければ、購入には至りません。
流入経路別 CVR が極端に低いチャネルは見直す
GA4 の流入経路レポートで、特定のチャネルだけ極端に CVR が低くないかを確認してください。典型的なのは、SNS 広告経由のトラフィックが量は多いものの、購入にほとんどつながっていないケースです。
クリエイティブで「興味」は引けたが、商品ページに着地した瞬間に「思っていたものと違う」と感じられて離脱する、いわゆるクリエイティブと商品ページの不一致が原因になっているケースが目立ちます。
このとき、解決策は「広告予算を増やす」ではありません。該当チャネルの予算を一旦止めるか、クリエイティブと着地ページを揃え直すのが先です。
チャネルを止めれば全体 CVR は数字上、改善します。
キーワード・広告クリエイティブと商品の不一致
同じことが、検索広告と SEO でも起こります。「相場より安い○○」というキーワードで上位にいるのに、自社の商品価格は相場以上だったり、「初心者向け」で取れているページが、よく見ると上級者向けスペック中心の商品ページだったり。
検索意図と商品の不一致が放置されている状態です。
このパターンに陥った場合、まずやるべきは商品の「位置取り」を言葉で見直すことです。同じ商品でも、「誰の・どんな問題を・どう解決するのか」を変えれば、刺さる相手は変わります。
価格を下げる前に、訴求の角度を変えるほうが利益率を守れることが多い、というのは実務で繰り返し感じてきた点です。広告と SEO の使い分けに迷っているなら、Web 広告と SEO はどっちが先?も合わせて読んでみてください。

リピート購入を増やし、客単価で売上を底上げする
新規購入を増やすのは時間もお金もかかりますが、一度買ってくれた人にもう一度買ってもらうためのコストは、新規獲得の数分の一で済むケースが珍しくありません。
CVR と並んで売上式の右端、客単価とリピート率を底上げするほうが、結果的に楽に売上を伸ばせる場面が多いのです。
カゴ落ちメールとフォローメールの設計原則
多くの EC カート・モールには、カートに商品を入れたまま離脱したユーザーに自動でメールを送る機能(カゴ落ちメール)が用意されています。
1 時間後・1 日後・3 日後のような複数回の配信を組むのが一般的ですが、即時のリマインドは逆効果になることがあるので注意が必要です。
- 1 通目は「カートに残っています」だけのシンプルな再訪導線にする
- 2 通目以降で、レビュー・送料・返品ポリシーなど「迷いの理由」を解消する材料を添える
- 件名で焦らせない(「在庫残りわずか」「最終チャンス」を多用すると、しつこさで嫌われる)
- 購入後はサンキューメール → 使用方法ガイド → 数週間後の体験ヒアリングの順で、押し売りせずに関係を続ける
このあたりの具体的な型は Shopify でリピーターを増やす工夫でも整理しています。Shopify を使っていない場合でも、メール配信の考え方はそのまま流用できます。
リピーターを生む「次の理由」を商品とは別に作る
もうひと押しリピート率を上げたい場合は、商品そのもの以外の「次の理由」を作っておきます。たとえば、初回購入者だけに使える 2 回目購入のクーポン。
会員ランクや誕生月特典。商品の使い方を季節ごとに案内するニュースレター。
「あの店からまた連絡が来たな」と感じてもらえるタッチポイントの数が、リピート率を静かに底上げします。
葬儀・医療・製造業のような、購入頻度が必ずしも高くない業態でも、家族・同僚への紹介や、関連商材の再購入は起こり得ます。「一度買って終わり」と決めてしまわないことが、客単価で勝負する側に回るための分かれ道です。

改善は「診断 → 仮説 → 1 つだけ動かす → 検証」で回す
ここまで挙げた改善ポイントは数多くあります。すべてを同時に動かしたくなる気持ちはわかりますが、経験上、うまくいきにくい進め方です。
同時に複数施策を打たない(効果が分からなくなる)
商品ページの写真を差し替え、カート画面の文言を変え、送料表示も移動し、さらに広告クリエイティブも刷新する。これを 1 週間でまとめてやってしまうと、CVR が上がっても下がっても、「どの施策が効いたのか」がまったくわからなくなります。
次に同じ改善を再現するのが極端に難しくなり、ノウハウも蓄積しません。
原則は、診断 → 仮説 →「1 ヶ所だけ」変更 → 2 週間以上の検証 → 次へ、という回し方です。検証期間を 2 週間以上取るのは、曜日要因と外部要因をならすためで、A/B テスト的な検証では特に重要です。

売れない時に焦って広告予算を増やしてはいけない理由
売上が伸びないとき、最も誘惑が強いのが「広告予算を倍にする」という選択です。これは、CVR の低さが解消されていない段階で行うと、ほぼ確実に裏目に出ます。
注意
CVR が 0.5% のままで広告予算だけを倍にしても、入ってくる売上は単純に倍にしかなりません。広告単価の上昇や競合の参入を考えると、効率はむしろ悪化します。
先にやるべきは、商品ページ・カート画面・信頼性のどこか 1 ヶ所を直し、CVR を 0.5% → 1.0% に持ち上げてから広告予算を増やす順番です。同じ広告費でも、売上の伸びがまったく違ってきます。
もし、いま売上が止まっていて、社内に「とにかく広告を増やそう」という空気が強い場合は、まずこの記事の冒頭で出した売上分解式を一緒に書き出してみてください。
数字を共有するだけで、議論の温度が変わることがよくあります。
自社の「売れない原因」を切り分けるチェックリスト
最後に、ここまでの内容を 1 枚のチェックリストにまとめます。
自社サイトに当てはめて、Yes が付かない項目から優先的に潰していくと、限られたリソースの中でも改善が前に進みやすくなります。
- ① 直近 3 ヶ月の売上を「訪問数 × CVR × 客単価」で分解して数値化しているか
- ② GA4 で全体 CVR・デバイス別 CVR・流入経路別 CVR・カート離脱率を毎月確認しているか
- ③ 商品ページに、寄り・引き・利用シーンを含む画像が 3 枚以上、スペック表が表組みで載っているか
- ④ 送料・在庫・納期が、価格のすぐ近くで見えているか(カート画面で初めて出てこないか)
- ⑤ レビュー・受賞歴・導入実績など、第三者からの評価が商品ページ内に置かれているか
- ⑥ ゲストチェックアウト、または会員登録の入力負担を最小化する設計になっているか
- ⑦ スマホでフォーム入力・カート確認・決済まで 1 度通してみて、引っかかる場所がないか
- ⑧ 商品ページの LCP が 2.5 秒以内に収まっているか(PageSpeed Insights のモバイル側)
- ⑨ 主要なコード決済・銀行振込・後払いなど、客層に合った決済手段が揃っているか
- ⑩ 特定商取引法に基づく表記・返品ポリシー・連絡先・SSL が整っているか
- ⑪ 流入経路別 CVR で、極端に低いチャネルを 1 つ以上特定しているか
- ⑫ カゴ落ちメール・購入後フォローメールが、最低 2 通以上自動化されているか
すべてが Yes である必要はありません。No が多い項目から 1 つだけ選んで、まず 2 週間動かしてみるのが、迷いなく前に進める進め方です。

よくある質問
Qアクセスはあるのに売れません。まず広告を増やすべきですか?
A多くの場合、広告を増やすのは最後の選択肢です。アクセスがあるのに売れない時の原因は、転換率(CVR)と客単価の側にあることがほとんどで、CVR が 1% 未満のまま広告予算だけを増やしても、売上の伸びは限定的になりがちです。まず GA4 でデバイス別・流入経路別の CVR とカート離脱率を確認し、商品ページや購入導線の改善で CVR を 0.5% から 1.0% に引き上げてから、広告予算の追加を検討する順番が現実的です。
QEC サイトの平均 CVR はどのくらいですか?
A調査機関によって幅がありますが、おおむね 1% 前後から 3% 前後の範囲で語られることが多いです。商材カテゴリの差が大きく、ギフト・ヘルスケア・アパレルでは 3〜4% 前後、家具・建材のような高単価商材では 2% 以下、BtoB 商材では 1% 前後となる傾向があります。自社の CVR を業界平均と比較する前に、過去 6 ヶ月の自社推移と比べる方が、改善判断には役立ちます。
Qカゴ落ち(カート離脱)はどうすれば減らせますか?
A世界的な調査では、カート投入後に約 7 割が購入に至らず離脱するとされ、国内でも 6 割台前半の調査結果があります。減らすための優先順位としては、送料・在庫・納期を商品ページに先出しすること、会員登録の強制をやめてゲストチェックアウトを許可すること、フォームのスマホ最適化、カゴ落ちメールの 1 時間後・1 日後・3 日後配信、の順で効果が出やすい印象です。
Qスマートフォン経由の購入比率は今どのくらいですか?
A経済産業省「令和 6 年度電子商取引に関する市場調査」(2025 年 8 月公表)によると、2024 年の物販系 BtoC-EC のスマートフォン経由比率は 61.7% で、前年比 3 ポイント上昇しています。すでに購入の 6 割以上がスマホで行われている状況です。スマホでの表示崩れ・タップ領域の小ささ・入力フォームの使いにくさは、それ自体が大きな機会損失になります。スマホ実機で、商品閲覧から決済完了まで一度通しでテストすることをおすすめします。
Qページ表示速度はどのくらいまで改善すべきですか?
AGoogle の Core Web Vitals では、最大コンテンツが描画されるまでの時間(LCP)が 2.5 秒以内が推奨値とされています(2026 年 5 月時点)。2.5 秒を超えると「改善が必要」、4 秒を超えると「不良」と判定されます。PageSpeed Insights でモバイル側のスコアを確認し、LCP 2.5 秒超なら、画像の WebP 化・サイズ圧縮、不要な外部スクリプトの整理から着手するのが効率的です。
Q商品数を増やせば売上は伸びますか?
A商品数を増やすこと自体が売上に直結するとは限りません。商品が増えると、1 商品あたりの露出が減り、ユーザーが目的の商品にたどり着く難易度が上がるという副作用もあります。先にやるべきは、よく売れている商品ページの CVR を改善することと、サイト内検索・カテゴリ整理の最適化です。商品ラインアップの拡張は、その後に検討する順番が安全です。
売れない原因の切り分けと、優先順位の付け方を整理しました。
ご自身のサイトでどこから手を付けるか迷う場合や、改善を支援する伴走相手をお探しの場合は、弊社のサービス案内からお気軽にご相談ください。

