「求人を出しているのに、まったく応募が来ない」
「来ても、うちに合わない人ばかりで面接がムダになっている」
「他社と同じような文面で差別化できている気がしない」
この手の相談は多いです。
求人媒体に毎月お金を払い、ハローワークにも出し、それでも反応がない。そうなると「うちは給料が安いから仕方ない」「業界的に人が来ない時代だから」と、待遇や市場のせいにしたくなる気持ちはよく分かります。
ただ、私がこれまで採用支援に関わってきた経験から言うと、待遇が同じでも、文章を変えただけで応募数が変わるケースは珍しくありません。
この記事は、求人募集の文章をどう書けば応募が来るのかを、例文付きで具体的に解説するものです。
「応募が来る募集要項」と「来ない募集要項」の違いを比較しながら、求人票の書き方のコツ、法的に避けるべきNG表現、そしてゼロから使えるテンプレートまでを一通りまとめています。
対象読者は、中小企業や病院・クリニックの経営者、または兼務でWeb担当や採用担当を任されている方です。
読み終えたあとには、自社の求人原稿を「何がダメで、どう直せばいいか」を自分で判断できるようになるはずです。
求人募集の文章で応募が来ない本当の原因
「応募が来ない」と感じたとき、いきなり文章を直そうとするのは実は危険です。
なぜなら、応募が来ない原因は「文章」だけとは限らないからです。
原因は大きく3つのレイヤーに分かれます。まずここを切り分けないと、いくら文章を磨いても成果が出ません。

媒体・待遇・文章、原因は3つのレイヤーに分かれる
レイヤー1:そもそも見られていない(媒体・露出の問題)
ハローワークだけに出している、Indeedに出したけど無料枠のまま放置している、といったケースです。
求人を出してから1週間以内の閲覧数が極端に少ない場合、文章の問題ではなく「届いていない」問題です。
Indeed等の管理画面で閲覧数を確認し、ほぼゼロなら媒体の選び直しやキーワード設定の見直しが先になります。
レイヤー2:待遇が地域相場を大きく下回っている
同じ職種・同じ地域の他社求人と比べて、給与が明らかに低い場合です。
こうなると、どれだけ文章を工夫しても限界があります。まずIndeedやハローワークで同職種の求人を5〜10件比較し、自社の待遇がどの位置にあるかを確認してください。
レイヤー3:見られているのに応募されない(文章の問題)
閲覧数はあるのに応募に至らない。ここが「文章で解決できる」領域です。
Indeedなどでは「クリック数に対する応募数の比率」が確認でき、この数値が極端に低い場合は、求人ページ内のテキストに改善余地があると判断できます。
まず確認すべきこと
「応募が来ない」と感じたら、いきなり文章を直すのではなく、閲覧数(見られているか)→ 待遇の相場比較 → 文章の質の順番で原因を切り分けてください。文章を直すべきなのは、レイヤー3に該当する場合です。
「文章の問題」かどうかを切り分ける判断基準
私の経験上の目安を挙げます。

- Indeed等で求人ページの閲覧数が週50件以上あるのに応募が0〜1件 → 文章の問題を疑う
- 閲覧数に対する応募率が1%を大きく下回っている → 求人ページ内のテキストに改善余地あり
- 応募率が3%以上あるなら、文章は機能している。他の要因(面接プロセス等)を見直す
私がこれまで相談を受けたケースでは、「文章の問題」と「待遇の問題」が同時に存在していることが多いです。
ただ、待遇はすぐには変えられなくても、文章は今日から変えられます。だからこそ、まず文章から手をつける価値があるわけです。
求人原稿の本質はコピーライティングである
ここが、この記事で最も伝えたいことです。
求人原稿の書き方は、「事務的に条件を並べる作業」ではありません。読み手の行動を変えるための文章技術、つまりコピーライティングそのものです。
多くの方が「求人票=労働条件の一覧表」と捉えています。もちろん法定の記載事項を満たすことは前提ですが、それだけでは「他社と同じ条件の、同じような文面」になるだけ。求職者から見れば、どの会社を選んでも変わらないように映ります。
結果、給料が1円でも高い会社に流れるか、そもそも応募すらされずにスルーされます。
売上を作る事業発信と求人原稿は同じ構造
考えてみてください。自社の商品やサービスを売るとき、「仕様を箇条書きにしたチラシ」だけで売れるでしょうか。
売れません。
お客様がなぜその商品を選ぶべきか、他社との違いは何か、買ったあとにどんな未来が待っているか。そこまで伝えて初めて「買おう」という行動が生まれます。
求人も同じです。
求職者は「お客様」であり、求人原稿は「セールスレター」です。自社で働くことの価値を、具体的に、説得力を持って伝える。この発想の転換ができるかどうかが、応募数の分岐点になります。

銀行員時代に法人営業をしていた経験からも思うのですが、提案書で「うちの融資条件はこうです」と書いただけでは、お客様は動きません。「この融資を使うと、御社の設備投資がこう変わり、3年後にはこういう収益構造になる」と書いて初めて検討してもらえる。
求人原稿もまったく同じ構造です。
「特徴の羅列」から「読み手の行動を変える文章」へ
実務的に最も効くのが、「特徴(Feature)」と「メリット(Benefit)」の書き分けです。
多くの求人原稿は「特徴」しか書いていません。
「研修制度あり」「賞与年2回」「社会保険完備」。これらは事実ですが、求職者の心を動かす力がない。なぜなら、他社にも同じことが書いてあるからです。
メリットとは、その特徴が求職者の人生や働き方にどう影響するかを具体的に言語化したものです。

特徴とメリットの書き換え例
| 特徴だけの書き方(Before) | メリットまで踏み込んだ書き方(After) |
|---|---|
| 研修制度あり | 入社後1ヶ月は先輩社員が同行し、3ヶ月後には独力で業務を回せる状態を目指します |
| 賞与年2回 | 昨年度実績で平均○ヶ月分(※自社の実績を記入)。個人の成果が数字で反映されます |
| アットホームな職場 | 社員12名の少人数体制。朝礼で全員が発言する習慣があり、役職に関係なく意見が通ります |
| 社会保険完備 | 雇用・労災・健康・厚生年金すべて加入。扶養家族分の健康保険も対応 |
左側の書き方は「情報の伝達」にとどまっています。右側は「この会社で働くとどうなるか」が見える。
この差が、応募するかしないかの分岐点です。
正直なところ、これはスキルというより「視点の切り替え」に近いと感じています。
「自社が何を持っているか」ではなく、「求職者がこの文章を読んで、どんな未来を想像できるか」を基準にすべての文言を見直してみてください。
なお、社長ブログの効果についても以前記事にしましたが、経営者自身の言葉で「なぜこの会社で働く価値があるのか」を発信することも、求人原稿の説得力を補強する有力な手段です。求人票だけで完結させようとせず、自社サイト全体で採用力を高める発想を持つと、文章の効果はさらに上がります。
応募が来る求人と来ない求人の違いを例文で比較
ここからは、実際の求人原稿でよく見る書き方(Before)と、応募につながりやすい書き方(After)を、3つの切り口で比較します。
Before→Afterの違いを見ると、「応募が来る求人」は特別なテクニックを使っているわけではなく、書く情報の解像度が圧倒的に違うことに気づくはずです。
仕事内容の書き方(Before → After)
Before(応募が来ない書き方)
「営業職として、新規顧客の開拓および既存顧客のフォローをお任せします。やりがいのある仕事です。」
この文章で求職者は「自分の1日」をイメージできるでしょうか。
できません。何を売るのか、どのくらいの件数をこなすのか、どんなお客様と接するのか。肝心なことが何も分からない。
Afterのほうが文字数は多いですが、読み終えたあとに「自分がその仕事をしている姿」が浮かぶかどうかが決定的に違います。
求職者は複数の求人を比較しています。具体的にイメージできる求人とそうでない求人が並んだとき、どちらに応募するかは明白でしょう。

待遇・給与の書き方(Before → After)
Before(応募が来ない書き方)
「月給25万〜35万円(経験・能力による)。各種手当あり。昇給・賞与あり。」
この書き方は非常に多いですが、求職者の立場で読むと不安しかありません。
「25万なのか35万なのか、どっちなんだ」「各種手当って何が含まれるのか」「昇給ありって、実際いくら上がるのか」。
曖昧な情報は、「都合の悪いことを隠しているのでは」という不信感に直結します。
Afterは情報量が多いですが、求職者が「自分の場合はいくらになるか」を計算できる点が決定的に違います。

職場環境の書き方(Before → After)
Before(応募が来ない書き方)
「アットホームな職場です。風通しの良い社風で、チームワークを大切にしています。」
正直に言います。「アットホームな職場」「風通しが良い」は、私の経験上、求人原稿で最も信用されにくい表現のひとつだと感じています。
理由はシンプルで、ほぼすべての会社がこう書いているからです。
さらに言えば、SNSや掲示板では「アットホームと書いてある会社ほど実態は真逆」という声が広まっています。この表現を使うこと自体がマイナスに作用するリスクすらあります。
Afterでは「アットホーム」という言葉を一度も使っていません。
にもかかわらず、読んだ人は「この会社の職場の雰囲気」を具体的にイメージできるはずです。
抽象的な形容詞を使わずに、具体的な事実と数字で職場を描写する。これだけで、求人原稿の信頼性は大きく変わります。
これまで支援してきた中小企業の経営者の方からは、「何を書けばいいか分からなかったけど、事実をそのまま書けばいいと分かって気が楽になった」という声をよく聞きます。
魅力的な言葉を考え出すのではなく、自社の事実を具体的に棚卸しする。それが「応募が来る求人」への最短距離です。
なお、若手社員が集まるホームページの特徴について以前まとめた記事でも触れていますが、求人原稿だけでなく、自社サイトの採用ページに職場写真やスタッフの声を掲載することで、文章の説得力はさらに増します。
求人募集の文章をゼロから書く手順と例文テンプレート
ここからは、求人原稿を実際にゼロから書くための手順を4つのステップに分けて解説します。
「何から手をつければいいか分からない」という方は、この順番どおりに進めてみてください。

Step1 採用ターゲットと差別化要因を整理する
いきなり文章を書き始める前に、「誰に来てほしいのか」と「なぜうちを選ぶべきなのか」を言語化します。
ここが曖昧なまま書き始めると、「誰にでも当てはまるけど、誰の心にも刺さらない文章」になりがちです。
応募が来ない求人をよく見ると、このステップを飛ばしているケースが目立ちます。
以下の質問に答える形で、まず整理してみてください。
- どんな経験・スキルの人に来てほしいか(未経験OK? 経験3年以上? 特定の資格?)
- その人が今どんな不満を抱えていそうか(長時間労働? 給料が上がらない? スキルが活かせない?)
- 自社で働くと、その不満はどう解消されるか(残業月15時間? 成果連動の賞与? 専門性が深まる?)
- 同じ地域の競合他社にはない、自社だけの強みは何か(経営者との距離が近い? ニッチな技術がある? 柔軟な働き方?)
たとえば「経験5年の営業マンで、大手企業のルーティン業務に飽きている人」をターゲットにするなら、「うちは社員20名の会社だから、1人の営業が経営判断に直結する仕事ができる」という差別化が成り立ちます。

この整理に30分かけるだけで、文章の方向性がまったく変わります。
Step2 仕事内容を「1日の流れ」で具体化する
仕事内容は、「何をするか」ではなく「1日をどう過ごすか」で書くのが最も効果的です。
前のセクションのBefore→Afterでも示しましたが、求職者が知りたいのは「営業」という職種名ではありません。「朝何時に出社して、午前中は何をして、昼はどうして、午後は何件くらい訪問して、何時に帰れるのか」という具体的な時間割です。
書き出しのコツ
現場の社員に「昨日1日、何をしていたか」を時系列で聞いてみてください。それをそのまま文章に起こすだけで、求人原稿の「仕事内容」欄は完成します。
採用担当者が机の上で考えるよりも、現場の社員に取材するほうが圧倒的に具体的な文章になります。
Step3 待遇・条件を透明に書く
給与・休日・福利厚生は、「求職者が自分の場合を計算できるレベル」まで分解して書くのが鉄則です。
「月給25万〜35万円」のような幅広いレンジだけでは、求職者は「自分はどこに入るのか」が分かりません。
以下のように内訳を明示してください。
- 基本給の金額
- 固定残業代がある場合は「金額・対象時間・超過分の扱い」の3点
- 手当の種類と金額(通勤手当、資格手当、役職手当など)
- 賞与の有無と昨年度実績
- 昇給の有無と昨年度実績
- モデル年収(年齢・入社年数別に1〜2パターン)
2026年の採用市場では、給与を非公開にしている求人は応募率が大きく下がる傾向があると、各種調査でも指摘されています。
求職者の多くは「給与が書かれていない求人には応募しない」と判断しており、透明性は信頼の最低条件になっています。
Step4 職場環境を具体的な事実で伝える
「アットホーム」「風通しが良い」を使わずに職場環境を伝えるには、以下の項目を具体的に書き出すのが早道です。
- 社員数と部署構成(○名体制。営業○名、事務○名、技術○名)
- 年齢構成(平均年齢○歳。20代○名、30代○名…)
- 有給休暇の平均取得日数(○○年度実績)
- 月平均残業時間(○○年度実績)
- 日常的なコミュニケーションの具体(朝礼の有無、部署間の相談頻度など)
- 教育・研修の仕組み(OJTの期間、メンター制度、資格支援など)
これらはすべて「事実」です。盛る必要も、飾る必要もありません。
事実を並べるだけで、求職者は「この会社は隠し事がなさそうだ」と感じてくれます。透明性そのものが、最も強力な採用メッセージになる。これは支援先を見ていて確信していることです。
例文テンプレート(一般企業向け)
【職種名】法人営業(既存顧客メイン/県内エリア担当)
仕事内容
県内の製造業を中心とした法人顧客への業務用○○の提案営業です。
既存顧客への定期訪問(月40件程度)が業務の約7割。新規開拓は月5〜10件の電話アポイントから始めます。
【1日の流れ】9:00出社→メール・資料準備(30分)→午前:既存顧客2〜3件訪問→12:00昼休憩→午後:新規アポ電話+訪問1〜2件→17:00帰社→日報作成→18:00退社
入社後の流れ
1ヶ月目:先輩営業に同行し、顧客と業務の流れを学ぶ
2ヶ月目:担当顧客を引き継ぎ、先輩のサポート付きで独力対応を開始
3ヶ月目以降:独立した営業活動。月次の目標は上長と相談のうえ設定
給与
月給27万〜32万円
・基本給:22万円
・固定残業代:3万円(月20時間分。超過分は別途全額支給)
・職務手当:2万〜7万円(経験年数・担当業務により決定)
賞与:年2回(昨年度実績 平均3.0ヶ月分)
昇給:年1回(昨年度実績 平均月5,000円)
モデル年収:入社3年目/28歳 → 420万円
職場環境
社員14名(営業4名・事務3名・技術7名)。平均年齢38歳。
有給休暇の平均取得日数:年12日(2025年度実績)
月平均残業:15時間(2025年度実績)
毎朝10分の全体朝礼あり。部署横断の相談は日常的に行われています。
上記はあくまで一例です。自社の実態に合わせて数字と内容を差し替えて使ってください。
大切なのはテンプレートの形式ではなく、「具体的な事実と数字で、求職者が自分の働く姿をイメージできるか」という基準で文章を見直すことです。
例文テンプレート(病院・クリニック向け / 看護師募集)
医療機関の求人は、一般企業とは求職者の判断基準が異なります。
看護師が職場を選ぶ際に重視する情報は、「診療科」「患者数」「夜勤体制」「教育支援」の4つが中心とされています。これらを具体的に記載することで、ミスマッチを防ぎつつ応募につなげやすくなります。

【職種名】看護師(外来/整形外科クリニック)
仕事内容
整形外科クリニック(19床)の外来看護業務です。
1日の外来患者数:平均50〜60名。処置内容はギプス固定の補助、注射、点滴、リハビリ補助が中心です。
【1日の流れ】8:30出勤→朝ミーティング(10分)→午前診療(8:45〜12:30)→昼休憩(60分)→午後診療(14:00〜17:30)→片付け・記録→18:00退勤
夜勤:なし(外来のみのクリニックです)
オンコール:なし
教育・キャリア支援
入職後2週間は先輩看護師がマンツーマンで指導。1ヶ月後に独力対応を開始します。
認定看護師の取得支援制度あり(受験費用・研修費用を法人が負担)。
学会参加支援あり(年1回、参加費・交通費を法人が負担)。
給与
月給28万〜34万円
・基本給:24万円
・資格手当:2万円
・職務手当:2万〜8万円(経験年数により決定)
賞与:年2回(昨年度実績 平均3.5ヶ月分)
昇給:年1回(昨年度実績 平均月4,000円)
職場環境
看護師6名体制。平均年齢34歳(20代2名、30代3名、40代1名)。
有給休暇の平均取得日数:年14日(2025年度実績)
月平均残業:8時間(2025年度実績)
完全週休2日制(日曜・祝日+平日1日のシフト制)
病院・クリニックの求人で見落とされがちなのが、「夜勤の有無」「オンコールの有無」を明記することです。
看護師にとってはこれが働き方を左右する最重要情報ですが、記載がない求人が意外なほど多い。「書いていない=不透明」と受け取られるリスクがあるため、該当しない場合も「なし」と明記するのをおすすめします。
なお、医療機関の採用ページの作り方については採用サイトの作り方の記事でも詳しく解説しています。求人票だけでなく、自社サイトの採用ページを充実させることで応募の質が変わります。
求人票の書き方で避けるべきNG表現と法的リスク
求人原稿は「自由に書ける」部分が多い反面、法律で明確に禁止されている表現も存在します。
知らずに使ってしまうと、求人メディアの審査で弾かれるだけでなく、行政指導やSNSでの炎上につながるケースもあるので、ここは慎重に確認しておいてください。
年齢・性別・国籍に関する禁止表現
労働施策総合推進法(旧・雇用対策法)および男女雇用機会均等法により、求人で年齢や性別を限定する表現は原則として禁止されています。
禁止表現と言い換え例
| NG表現 | NGの理由 | 言い換え例 |
|---|---|---|
| 20代限定 / 20代歓迎 | 年齢制限 | 「入社後の研修制度が充実。未経験からスタートできます」 |
| 若い方歓迎 / 体力のある方 | 年齢の間接的な示唆 | 「20kg程度の荷物の運搬が日常的に発生します」(具体的な業務要件で記載) |
| 女性歓迎 / 主婦さん歓迎 | 性別限定 | 「主婦(夫)スタッフが活躍中です」(事実の紹介にとどめる) |
| 男性スタッフ募集 | 性別限定 | 「力仕事あり」(業務要件として記載) |
| 日本国籍の方に限る | 国籍制限 | 「日本語でのビジネスコミュニケーションが可能な方」 |
固定残業代の正しい書き方
固定残業代(みなし残業代)は、記載方法に法的な要件があります。
前のセクションでも触れましたが、改めて正しいフォーマットを確認しておきましょう。
固定残業代の記載で必須の3要素
1. 固定残業代の金額(例:3万円)
2. 対象となる時間数(例:月20時間分)
3. 超過分の扱い(例:超過分は別途全額支給)
❌ NG:「月給30万円(残業代込み)」
✅ OK:「月給30万円(うち固定残業代5万円/40時間分、超過分は別途支給)」
この3要素が欠けた求人は、ハローワークでは修正指導の対象になり、Indeed等の民間メディアでも審査で指摘を受ける場合があります。
「うちは固定残業代を導入している」という企業は、今すぐ自社の求人票を確認してみてください。

2024年4月・2025年4月の法改正で変わったこと
求人票に関連する法改正は、直近2年で2回行われています。どちらも施行済みのため、2026年5月時点では対応が必須です。
直近の法改正の概要
| 施行時期 | 改正内容 | 対象 |
|---|---|---|
| 2024年4月 | 職業安定法施行規則改正:求人時の明示義務に3項目追加(①従事すべき業務の変更の範囲、②就業の場所の変更の範囲、③有期労働契約を更新する場合の基準) | すべての企業 |
| 2025年4月 | 求人メディア・人材紹介会社による「お祝い金」の提供を原則禁止 | 求人メディア事業者・人材紹介事業者 |
2024年4月改正のポイントは、求人票に「将来的に業務内容や勤務地が変わる可能性があるか」を明示する義務が加わったことです。
たとえば「転勤なし」の場合でも、「就業場所の変更の範囲:変更なし」と明記する必要があります(厚生労働省公式ページより)。
2025年4月改正のポイントは、中小企業にとっても影響が大きい内容です。
これまで「お祝い金5万円」などのインセンティブで応募を集めていた求人メディア・人材紹介会社側の手法が使えなくなりました。つまり、求人メディア側の金銭的インセンティブに頼れない以上、求人原稿そのものの質がより問われる時代になったわけです。
この法改正の背景も踏まえると、「求人原稿はコピーライティングである」という本質がいよいよ無視できなくなっていると感じます。
求人募集でよくある誤解と失敗パターン
求人原稿の相談を受けていると、同じパターンの誤解に何度も出くわします。
ここでは特に多い3つの誤解を取り上げます。御社の求人に当てはまっていないか、チェックしてみてください。

「テンプレをコピペすれば十分」は差別化を捨てること
テンプレートは「構成を整えるための骨組み」としては有効です。先ほどこの記事でも例文テンプレートを紹介しました。
ただし、テンプレートの文面をそのまま使い回すと、同じ業界・同じ地域の他社と「ほぼ同じ求人」が出来上がってしまいます。
求職者は複数の求人を比較しています。テンプレ感の強い求人は記憶に残りません。
テンプレートは構成だけ借りて、中身は自社の固有情報に入れ替える。この一手間を省くかどうかで結果が変わります。
自社にしかない特徴を最低3つ、テンプレートに組み込んでください。
「うちには特徴なんてない」と思う方もいるかもしれません。でも、社員数、取引先の業種、社長との距離感、教育の仕組み、残業の少なさ、設立年数、技術の専門性。探してみると、何かしら見つかるものです。
「給与を高く書けば応募は増える」の落とし穴
給与を高めに設定すれば、確かに応募数は増える傾向があります。
しかし、応募数と採用の成功は別の話です。
給与を実態より高く見せる書き方(手当込みの総額を「月給」として強調する等)をすると、面接時や内定後に「聞いていた条件と違う」というトラブルが発生しやすくなります。
入社後の早期離職にもつながりますし、SNSや口コミサイトで「求人と実態が違う会社」として拡散されるリスクも見過ごせません。
「アットホームな職場です」が逆効果になる理由
この点は前のセクションでも触れましたが、改めて強調しておきます。
「アットホーム」「風通しが良い」「やりがいがある」。
これらは求人原稿で最も多用される表現であり、同時に最も信用されにくい表現の代表格です。
理由は2つあります。
1つ目は、多くの会社が同じことを書いているから。差別化にならないどころか、「テンプレ感」を強めてしまいます。
2つ目は、SNSや掲示板で「アットホーム=ブラック」というイメージが広がりつつあることです。
「アットホームと書いてある会社ほど、実際はプライベートに踏み込んでくる」「風通しが良い=上の意見が一方的に通る」。こうした皮肉な解釈が広まっているのが現実です。
解決策はシンプルです。抽象的な形容詞を一切使わず、具体的な事実だけで職場を描写してください。
事実の積み重ねが、結果として「この会社は雰囲気が良さそうだ」という印象を読み手に届けます。
先日も、ある建設会社の経営者から「求人に何を書けばいいか分からない」と相談を受けました。話を聞いていくと、「若手が入社3年で現場監督を任された」「社長が毎朝現場に顔を出して声をかけている」「資格取得費用を全額負担している」といった事実がいくつも出てきました。
これをそのまま求人原稿に書いたところ、以前より明らかに応募の質が変わったと報告をもらっています。弊社でも建設業のHP×採用ブランディングを支援した事例がありますが、やはり「自社の事実を正しく言語化すること」が最も効果的でした。
求人募集の文章の書き方でよくある質問
求人原稿の書き方とは、法定表示義務を満たしたうえで、自社の事実を具体的に言語化し、求職者が「この会社で働く自分」をイメージできる文章を設計するプロセスです。
ここからは、経営者やWeb担当者からよく受ける質問をまとめます。
Q求人票と求人原稿と募集要項は何が違いますか?
A求人票はハローワークに提出する公式書類で、フォーマットが統一されています。求人原稿はIndeedや求人ボックスなど民間メディアに掲載する文章で、自由度が高い代わりにメディア独自のルールがあります。募集要項は企業が採用候補者に提示する労働条件の一覧で、求人票より広い情報(福利厚生、キャリアパスなど)を含む場合があります。どの媒体に出す場合も、職業安定法の明示義務項目は共通して記載が必要です。
Q求人票に「給与応相談」と書くのは問題ありますか?
A法律上は「給与応相談」だけでは明示義務を満たさない可能性があります。少なくとも基本給の金額または金額レンジは記載し、固定残業代がある場合は金額・対象時間・超過分の扱いを明記してください。加えて、2026年現在の採用市場では給与が非公開の求人は応募率が下がる傾向にあるとする調査もあり、できる限り具体的な金額を開示することを推奨します。
Qハローワークの求人票は書き方を工夫しても意味がないのでは?
Aハローワークの求人票はフォーマットが統一されていますが、「仕事の内容」「その他」などの自由記述欄があります。ここに1日の業務フローや職場構成、教育体制などの具体情報を書き込むだけで、他社との差別化が可能です。ハローワークを利用する求職者も複数企業の求人票を比較検討しているため、具体性と信頼性の高い記述は応募率に影響します。
Q求人で「未経験歓迎」と書いても応募が来ないのはなぜですか?
A「未経験歓迎」だけでは、求職者は「入社後にどう学べるのか」「放置されないか」が分かりません。未経験者を採用したいなら、入社後の教育プログラム(OJTの期間、メンターの有無、独力対応までの目安期間)を具体的に書いてください。「未経験でも3ヶ月後には独力で業務を回せるよう、先輩社員がマンツーマンで指導します」のように、不安を解消する情報をセットで書くことで応募につながりやすくなります。
QIndeedに出しているのに応募がゼロです。文章以外に原因はありますか?
Aまず管理画面で「閲覧数」を確認してください。閲覧数がほぼゼロの場合は、文章の問題ではなく、求人タイトルのキーワード設定が求職者の検索行動と合っていない可能性があります。Indeedでは「職種名+勤務地」で検索するユーザーが多いため、社内独自の役職名ではなく、求職者が実際に検索する一般的な職種名をタイトルに使うことが有効です。閲覧数はあるのに応募がゼロなら、本記事で解説した文章改善の出番です。
Q病院の求人で「最新の医療機器を導入」と書いても大丈夫ですか?
A医療広告ガイドラインは「医療を受ける者を誘引する表示」が対象であり、求人募集への直接的な適用は法律上明確ではありません。ただし、医療法人によっては保守的に解釈し、求人にも同ガイドラインに準じた表現制限を設けている場合があります。「最新の医療機器」と書く場合は、具体的な機器名やメーカー名を併記することで客観性を持たせるか、「2024年に○○を導入」のように事実ベースの記述にとどめるのが安全です。判断に迷う場合は、法人の法務部門や管轄の都道府県医療監督部門に確認してください。
Q求人原稿と自社の採用サイト、両方あったほうがいいですか?
A両方あるのが理想です。Indeedやハローワークの求人原稿は「認知と初回接触」の役割を担い、自社採用サイトは「企業文化や職場の雰囲気を深く伝える」役割を担います。求職者の多くは求人原稿を見た後に企業のWebサイトを確認する行動を取ります。自社採用サイトに職場写真、スタッフの声、1日の業務フローなどを掲載しておくと、求人原稿の情報を補強し、応募の後押しになります。
求人原稿の完成後に使える自己チェックリスト
最後に、求人原稿を書き終えたあとに確認すべきポイントを一覧にまとめます。
提出前・掲載前に、このリストをひと通り確認してください。

法的チェック
- 年齢を限定・示唆する表現はないか(「若い」「体力がある」「20代」など)
- 性別を限定・示唆する表現はないか(「女性歓迎」「男性スタッフ」など)
- 固定残業代がある場合、金額・対象時間数・超過分の扱いの3点が明記されているか
- 試用期間がある場合、期間と試用期間中の待遇が記載されているか
- 2024年4月改正の追加項目(従事すべき業務の変更の範囲・就業の場所の変更の範囲・有期労働契約を更新する場合の基準)に対応しているか
- 医療機関の場合、治療効果の保証や比較優位性の根拠なき記述がないか
文章品質チェック
- 仕事内容が「1日の流れ」で具体的に書かれているか(「営業」だけで終わっていないか)
- 「やりがい」「成長」「アットホーム」などの抽象語が、具体的な事実に置き換えられているか
- 給与の内訳が、求職者が「自分の場合はいくらか」を計算できるレベルで書かれているか
- 特徴(Feature)だけでなく、求職者にとってのメリット(Benefit)が書かれているか
- 自社にしかない特徴が最低3つ盛り込まれているか(テンプレのコピペになっていないか)
- 他社の同職種求人と並べたとき、「この会社は違う」と思えるポイントがあるか
掲載前の最終確認
- 現場の社員に読んでもらい、「実態と合っているか」を確認したか
- ハローワーク・Indeed・自社サイトなど掲載先ごとのフォーマットに合わせて調整したか
- 求人タイトルに、求職者が実際に検索する職種名(一般的な名称)が含まれているか
最も大切な確認ポイント
完成した求人原稿を読み返して、「求職者がこの文章を読んで、自分がこの会社で働く姿をイメージできるか」を自分に問いかけてみてください。
イメージが浮かばないなら、情報の具体性が足りていません。
求人原稿は、書いて終わりではありません。
掲載後に応募状況を見ながら「閲覧数が少ないのか、閲覧されているのに応募が来ないのか」を定期的に確認し、原因のレイヤーに応じて改善を重ねていく。それが採用力を上げる最も着実な方法です。

もし「求人原稿だけでなく、採用サイト全体を見直したい」「自社サイトで採用ページを作りたい」と考えているなら、採用サイトの作り方の記事も参考にしてください。
また、企業ブログに何を書けばいいかについてまとめた記事では、求人原稿以外のコンテンツで採用力を高める方法も解説しています。
求人原稿の改善は、地味ですが確実に効果が出る取り組みです。
「1文でもいいから、今の求人の抽象語を具体的な事実に書き換えてみる」。まずはそこから始めてみてください。


