制作会社とのトラブル事例と対策|「思っていたのと違う」を防ぐための伝え方

Web制作トラブルの原因と防止策の全体構造図

「お金も時間もかけて作ってもらったのに、出てきたサイトが思っていたものとまったく違う」
Web制作会社とのトラブルは、決して珍しいものではありません

こうしたトラブルの大半は、制作会社の腕や誠実さの問題ではなく、発注前にどれだけ「自社が欲しいもの」を言葉と書面にしておけたかで決まっています。
「思っていたのと違う」の正体は、発注側と制作側で、同じ言葉に違う絵が浮かんでいた状態にすぎないからです。

この記事では、Web制作で起きやすいトラブルを5つの領域に整理したうえで、未然に防ぐ伝え方・契約書のチェック項目・RFP の組み立て方・制作会社を選ぶときの軸を、実務で使える形でまとめます。
もしすでに揉めごとが起きている場合の段階的な動き方も後半に載せていますので、状況に合わせて使ってください。

本記事の前提:「優秀な制作会社をどう見つけるか」よりも、「発注する側として、どこまで言葉と書面で整えておくか」のほうが、トラブルの起きやすさを大きく左右します。
制作会社選びは大切ですが、発注側の準備不足を完全には埋められません

目次

制作会社とのトラブルが集中する5つの領域

Web制作にまつわるトラブルは、案件ごとに事情はさまざまですが、実務上は次の5つの領域に集中する傾向があります。
「自社で起こりそうなトラブルがどこに該当するか」を先に把握しておくと、契約段階で潰しておくべき論点が見えてきます。

Web制作トラブル5領域の連鎖関係図
5つの領域は独立ではなく連鎖して被害が拡大する

費用に関するトラブル(追加請求・リース契約・解約金)

最も相談が多いのが費用面のトラブルです。
「ホームページ制作一式で約 50 万円」と言われていたのに、進めていくうちに「写真撮影は別途」「SEO 対策はオプション」「CMS の設定費用が追加で発生」と、次々と追加請求が積み上がっていくケースが典型です。

もう一つ多いのが、「月額数千円で持てる」と案内された格安サブスク型・リース型ホームページの落とし穴で、途中解約時に残債一括や高額のキャンセル料を請求される事例です。
表面の月額だけ見ると安く感じても、契約期間全体で換算すると、相場よりむしろ高くつくこともあります。

デザインや品質に関するトラブル(イメージのズレ・素人感)

「思っていたデザインと違う」「写真や文章が素人っぽい」という品質面のトラブルもよく聞きます。
このタイプのトラブルは、発注側と制作側のどちらが悪いという話ではなく、抽象的な言葉(親近感・高級感・モダンなど)が、人によって違う絵を呼び起こしていることから起きるケースが大半です。

具体的な伝え方の不足は、修正の往復を増やし、納期遅延や追加費用にもつながるため、トラブル全体の起点になりやすい領域でもあります。
このあとの H2 で「ズレを潰す3つの伝え方」をまとめていますので、発注前にひと通り押さえておくと事故が減ります。

納期や進行に関するトラブル(遅延・無理スケジュール)

納期遅延は、制作会社側の事情(他案件の遅延・担当者の離職)と、発注側の事情(社内承認の遅れ・修正回数の増加)の両方で起きます。
「公開予定日に間に合わない」という結果だけ見ると制作会社の責任に感じますが、実態を分解すると、発注側からの返答が止まっていた期間が大きく寄与しているケースもあります。

反対に、もともと無理のあるスケジュールで合意してしまい、品質が犠牲になるパターンもあります。
「展示会に間に合わせたい」「決算期に合わせて公開したい」といった締切がある場合は、契約時点でその制約を共有し、スコープ(機能やページ数)を絞って間に合わせる判断もセットで持っておく必要があります。

コミュニケーションに関するトラブル(連絡途絶・担当者交代)

「ある日から急に連絡が取れなくなった」「担当者が辞めて、引き継ぎがされていない」という、進行そのものが止まってしまうトラブルもあります。
制作会社の規模が小さいほど、担当者1人に依存しやすく、その1人が抜けると案件全体が宙に浮く構造になりやすい点には注意が必要です。

事前にできる対策は、「単独の担当者だけでなく、責任者や法人としての窓口を契約書に書いておく」ことです。
連絡が滞ったときに、誰のどのアドレスへ連絡すれば法人として対応してもらえるのかを、事故が起きる前に明文化しておく発想です。

権利・所有権に関するトラブル(著作権・ドメイン名義・データ引き渡し)

契約段階で見落とされがちで、後から効いてくるのが権利・所有権の論点です。
日本の著作権法では、Web サイトのデザインやコードの著作権は、原則として「創作した側(制作会社)」に帰属します。契約書に著作権の譲渡条項や使用条件を書いていなければ、発注者は支払いをしてもサイトを自由に改変・再利用できないことがあります。

もう一つの落とし穴がドメイン名義です。
ドメインの登録者情報が制作会社名義のままだと、契約終了や制作会社の倒産といったタイミングで、移管・管理ができなくなるケースがあります。発注時に「登録者は自社、管理代行のみ制作会社」という体制になっているかどうかは、契約前に必ず確認しておきたいポイントです。

5つの領域(費用/品質/納期/連絡/権利)のうち、「権利・所有権」は契約段階でしか抑えにくい論点です。
支払い後・公開後に「実は移管できません」と判明すると、解決に膨大な時間とコストがかかります

「思っていたのと違う」が起きる本当の理由|抽象的な言葉の解釈差

トラブルの中でも、もっとも頻繁に起きるのが「思っていたデザインと違う」というイメージのズレです。
このズレは、制作会社の技量不足ではなく、発注側と制作側が、同じ言葉から違う絵を思い浮かべている状態から発生します。

同じ「親近感」「高級感」でも人によって思い浮かべる絵が違う

例えば「親しみやすくて、でも信頼感のあるデザインで」というオーダーを考えてみてください。
発注側は「白を基調に、人物写真を大きく、コーポレートカラーは紺で」というイメージを持っているかもしれません。一方、制作側のデザイナーは「淡いベージュとオレンジで、丸みのある書体、イラスト中心」を想像することがあります。

どちらも「親しみやすくて信頼感がある」という言葉と矛盾しません。
つまり、「親近感」「高級感」「モダン」「ナチュラル」のような抽象語は、それ単独では何の指示にもなっていない、と理解しておくのが安全です。

抽象的な指示語から生まれる解釈差の分岐図
同じ「親しみやすい」から全く違うデザインが生まれる

参考サイトを送るだけでは伝わらない理由(採用/不採用の境目が見えない)

イメージのズレを防ごうとして、「こういうサイトが好きです」と参考 URL を送るのは多くの方が試す方法です。
ただ、参考サイトの URL を渡されたデザイナーは、そのサイトの何を参考にすればいいのか判断材料を持っていません。配色なのか、写真なのか、レイアウトなのか、フォントなのか、雰囲気全体なのかが分からないからです。

結果として、デザイナーは「この発注者は、たぶんこういう雰囲気が好きなのだろう」と推測でデザインを進めることになり、提出されたものに対して「ここは違う」「これも違う」というやり取りが始まります。
参考サイトを送るときは、「どの要素を採用したいか」と「どの要素は採用したくないか」をワンセットで伝える必要があります。

発注者が「うまく言語化できない」のは普通|だから道具で補う

Web 制作の発注者の多くは、自社のサイトに対して「なんとなくこうしたい」という感覚はあるものの、それを言語化するのは慣れていない、というのが実態です。
これは恥ずべきことではなく、ごく当たり前の状況だと考えてください。日々の本業は別にあり、デザインの専門用語を駆使する練習を積んでいる人のほうが少数派だからです。

言語化できないなら、「言葉以外の道具」で伝える前提に切り替えるのが現実的です。
後述するように、参考サイトの「採用要素・不採用要素のリスト化」と「ムードボードによる視覚的な共有」を組み合わせれば、専門用語に頼らずにイメージを擦り合わせることができます。

イメージのズレを潰す3つの伝え方|参考・反参考・ムードボード

イメージのズレを最小化するための実践的な型として、「採用したい参考」「採用したくない反参考」「ムードボードによる視覚共有」の3点セットを発注前に用意することをお勧めします。
これだけで、デザイン提案を巡る往復回数が体感で半分以下に減ります。

参考・反参考・ムードボードの重なりで精度が上がる図
3つのツールの重なりが発注者のイメージを正確に伝える

採用したい要素を3つの参考サイトから具体的に抜き出す

まず、好みの近い参考サイトを 3 つほど選び、それぞれについて「何を採用したいか」を具体的に箇条書きにします。
「サイト A の配色、サイト B のヘッダーレイアウトと写真の使い方、サイト C のフォントと余白」のように、URL と一緒に採用したい要素を粒度をそろえて書き出します。

  • 配色:ベースカラー/アクセントカラー/背景色のトーン
  • レイアウト:ファーストビューの構成、グリッドの取り方、余白の使い方
  • 写真の使い方:実写中心か、イラスト中心か、人物の有無、写真の明るさ
  • フォントとあしらい:見出しの太さ、本文の書体、装飾の量
  • 動き:アニメーションの有無、スクロール挙動

この粒度で書き出しておくと、デザイナー側で「採用する要素の組み合わせ」を再構成する作業がしやすくなり、初稿の精度が一気に上がります。

避けたい要素を反参考サイトで明示する(同じくらい重要)

採用したい要素と同じくらい重要なのが、「避けたい要素」の明示です。
「派手なアニメーションは避けたい」「シリアスすぎる雰囲気は避けたい」「キャラクターのイラストは使いたくない」など、デザイナーに踏み込んでほしくないラインを、こちらも具体例とセットで伝えます。

反参考サイトを 1〜2 つ用意し、「このサイトのこの部分は採用したくない」と明確にしておくと、デザイナーの試行錯誤の範囲が大幅に狭まります。
結果として、デザイナーは「やってよい領域」に集中できるので、初稿が発注者の感覚に近づきやすくなります。

ムードボードで色・素材・トーンを視覚的に共有する

ムードボードとは、写真・配色サンプル・素材・キャッチコピーなどを 1 枚のボードに集め、サイトの世界観を視覚的にまとめたものです。
言葉でうまく説明できない「雰囲気」を共有するための道具で、Pinterest や Figma、Canva などを使って 1 時間ほどで作れます。

作るときに意識したいのは、「自社のブランドや事業を 3 つのキーワードで表す」ことです。
例えば医療機関なら「安心感/清潔/専門性」、ものづくり企業なら「実直/実績/現場感」のように、3 語に絞り込んでからボードを組むと、雑多にならず、世界観が伝わりやすくなります。

「参考」「反参考」「ムードボード」の3点セットを RFP に添付するだけで、デザイナーが推測でデザインを進める範囲が極端に狭まります。
初稿の往復が減ると、結果として納期遅延と追加修正費用のリスクも同時に下がります

契約書で必ず押さえる7項目|後から揉めやすい論点を先に潰す

口約束やメールのやり取りだけで進めると、後から「言った/言わない」の論点が必ず出てきます。
Web 制作の契約書では、最低でも次の 7 項目を文書化しておくと、後から揉めやすい論点をかなり先回りで潰せます。

契約書7項目とプロジェクト時間軸の対応図
7項目はプロジェクトの各段階で効力を発揮する

業務範囲(ページ数・機能・成果物の定義)

「ホームページ制作一式」という記載は、後で必ず追加請求の温床になります。
「トップページ、会社概要、サービス紹介(3 ページ)、ニュース機能、問い合わせフォーム、基本的な SEO 設定(メタタグとサイトマップ)を含む」というレベルで、ページ数と機能を具体的に列挙してください。

同じくらい大事なのが「成果物の定義」です。
納品されるのは「公開された Web サイトの状態」までなのか、「ソースコード一式」「ロゴや写真の元データ」も含むのか、「操作マニュアル」を作るのか。これらを契約書で揃えておかないと、解約時に資産が手元に残らないというトラブルが起きます。

対価と支払い条件(追加費用の発生条件まで明記)

総額・支払い回数・支払いタイミング(契約時/中間/納品時)を明記するのは最低限として、その先の「どんなときに追加費用が発生するのか」までを文書にしておくと、進行中の不意打ちが減ります。
例えば「指定ページ数を超える追加ページは 1 ページにつき約 XX 円」「素材撮影は別途約 XX 円から」のように、発生し得る追加項目を先に挙げておく形です。

納期と納品形式(遅延時の対応も)

納品日と納品形式(本番公開/ステージング納品/データ納品)を明記し、加えて「どちらの事情で遅れたか」によって対応がどう変わるかも、契約段階で擦り合わせておきたい論点です。
発注側の指示遅延が原因の遅延は仕方ない側面がありますが、制作会社側の事情で遅延した場合に補償や金額調整があるのかは、後から決めるのが難しい論点です。

修正回数・範囲・追加料金(「修正1回」の定義)

修正回数は、業界全体で見ると 2〜5 回程度の幅で設定されているケースが多いです。
大事なのは回数そのものよりも、「修正 1 回」の定義を契約書に書いておくことです。「同時にまとめて出した修正依頼は 1 回とカウントする」のか、「修正項目 1 件で 1 回とカウントする」のかで、後から大きく揉めます。

追加料金の単価も同様で、「テキストの差し替え」「画像の差し替え」「レイアウトの変更」「ページの追加」など、想定される修正カテゴリごとに 1 件あたりの金額レンジを決めておくと、追加見積もりのたびに交渉が発生する状態を避けられます。
金額は数千円〜数万円の幅で設定されているケースが多いので、相場感をつかんだうえで合意しておくと安心です。

著作権と著作者人格権(譲渡条項と不行使特約)

Web サイトのデザイン・コード・原稿の著作権は、日本の著作権法では原則として「創作した側」に帰属します。
つまり、制作費を支払ったからといって、自動的に著作権が発注者に移るわけではありません。発注者がサイトを自由に改変・再利用したい場合は、契約書に「著作権を発注者に譲渡する」という条項を明記しておく必要があります。

もう一つ重要なのが「著作者人格権」で、これは公表権・氏名表示権・同一性保持権の 3 つを指し、著作権を譲渡しても制作者側に残る権利です。
譲渡後にデザインを大きく改変する可能性があるなら、契約書に「著作者人格権を行使しない」という不行使特約を入れておかないと、改変の度に制作者側から異議を申し立てられる余地が残ります。

著作権と著作者人格権の2層構造図
著作権を譲渡しても著作者人格権は制作者側に残る

ドメイン・サーバーの所有権と管理権限

ドメインの登録者(Registrant)を誰の名義にするか、サーバーのアカウントを誰が保有するか、管理画面のログイン情報を誰が持つか
これらは契約段階で明文化しないと、契約終了時に「ドメインを移管できない」「サーバーから自社サイトを取り出せない」という事態に陥ります

原則として、ドメインの登録者名義は必ず自社にしてください。
「制作会社が管理代行する」のは構いませんが、登録者まで制作会社になっていると、自社の事業の根幹を他社に預けている状態と同じです。

契約終了時のデータ引き渡しと損害賠償・紛争解決

契約が無事に終わるケースだけでなく、途中で解約する場合・公開後にトラブルが発生した場合のシナリオも、契約段階で決めておきたいところです。
具体的には、「途中解約時に納品済みの素材・データを引き渡してもらえるか」「公開後の不具合に何日間対応してもらえるか」「紛争が起きたときの管轄裁判所はどこか」といった項目です。

これらの項目は普段は使われないので軽視されがちですが、揉めごとが起きてから決めようとすると、相手の交渉力が高いほど自社に不利な条件で押し切られます
平時に決めておく価値があるのは、まさにこういう項目です。

RFP(提案依頼書)を作ると失敗が激減する理由

RFP(提案依頼書)は、発注側が「自社が欲しいもの」を文書化して、複数の制作会社に同じ条件で提案を依頼するための書類です。
大企業のシステム発注で使われるイメージが強いですが、中小企業や医療機関の Web サイト発注でも、A4 数枚程度の簡易版で十分に機能します

RFP に最低限書く5項目(目的/背景/要求事項/体制/スケジュール)

  • 目的とゴール:なぜサイトを作るのか/このサイトで何を達成したいのか(例:「年間の新規問い合わせを現状の月 5 件から月 15 件に増やす」など)
  • 背景と現状の課題:今のサイトの問題点/業界の競合状況/社内のリソース
  • 要求事項:機能(ページ構成・問い合わせフォーム・予約システム等)/非機能(表示速度・スマホ対応・アクセシビリティ等)
  • 発注側の体制と役割:プロジェクト責任者/窓口担当者/意思決定の承認ルート
  • 希望スケジュール:公開希望日/中間マイルストーン/予算レンジ

この 5 項目を A4 で 3〜5 枚にまとめるだけで、制作会社側は「何を提案すべきか」が明確になり、提案の質と比較しやすさが大幅に上がります
逆に、口頭でふんわり伝えるだけだと、各社の提案がてんでバラバラの粒度で出てきてしまい、横並びで比較できません。

要求事項は「Must / Should / Could / Won’t」で優先度を付ける

要求事項を並べるときに有効なのが、「Must(必須)」「Should(できれば実現したい)」「Could(余裕があれば)」「Won’t(今回はやらない)」の 4 階層で優先度を付ける方法です。
すべてを Must にすると予算が膨らみますし、優先度がないと制作会社側も「どこから着手すべきか」を判断できません。

例えば「問い合わせフォームは Must」「予約システムは Should」「英語ページは Could」「会員機能は Won’t(将来検討)」のように仕分けると、予算と機能の調整がしやすくなり、複数社の提案の優劣も判断しやすくなります。

RFP要求事項のMoSCoW優先度ピラミッド
Must〜Won’tの4階層で仕分けると見積もり比較の精度が上がる

同じ RFP を複数社に渡すことで比較精度が一気に上がる

RFP の真価は、複数の制作会社に同じ条件で提案を出してもらえる点にあります。
各社が同じ要求事項に対して、どんなアプローチを提案してくるか/見積もりの内訳がどう異なるか/追加で出てきた指摘や提案はどれだけ的を射ているか、を横並びで比較できます。

このとき、提案の上手さだけで決めず、「自社の課題を正しく理解しているか」を最重要視してください。
派手な提案やデザインの見栄えに引きずられて、後から「やっぱり認識がズレていた」となるパターンが少なくないからです。

制作会社を選ぶときに見るべき7つの軸

RFP に対する複数社の提案を比較するときの、実務的な評価軸を 7 つに整理します。
1 軸目だけ、または価格だけで決めないことが、結果として「思っていたのと違う」を最小化する近道です。

制作会社を選ぶ7つの評価軸フレームワーク
価格だけでなく7つの軸で総合的に評価すると失敗が減る

同業種・同規模の実績があるか

同じ業種・同じ規模感の制作実績が、その制作会社のサイトに公開されているかを確認します。
製造業向けと EC 向けでは設計思想がまったく違いますし、病院・クリニック向けは薬機法対応や患者目線の導線設計といった特有のノウハウが必要です。

見積もりの内訳が項目別に開示されているか

「一式 約 100 万円」とだけ書かれた見積もりは、後から追加請求が出やすい構造です。
「デザイン費」「コーディング費」「CMS 構築費」「初期 SEO 設定」「公開後保守(3 ヶ月分)」のように、項目別に内訳が分かれているかを必ず確認してください。内訳を開示している会社は、後から発生する費用の説明もしやすい構造になっています。

公開後の運用・保守を引き受ける体制があるか

Web サイトは公開した瞬間が完成ではなく、運用しながら改善していく前提のものです。
公開後の月額保守(セキュリティアップデート/バックアップ/軽微な修正の対応/問い合わせ窓口)を、どの範囲・いくらで引き受けてくれるかを契約前に確認します。月額の相場はサイト規模により幅があり、約 5,000 円〜約 30,000 円のレンジに収まるケースが一般的です。

担当者の応答スピードと説明の分かりやすさ

初回問い合わせから提案までの応答スピード、専門用語をどれだけ噛み砕いて説明してくれるか、こちらの的外れな質問にも丁寧に向き合ってくれるか。
これらは「契約後のコミュニケーション品質の予告編」だと考えてください。問い合わせ時点で雑な対応の会社は、契約後にていねいになることはまずありません。

提案内容に「自社の課題理解」が反映されているか

提案書を眺めるときに見るべきは、テンプレートをほぼそのまま流用していないか、自社の事業や課題に踏み込んだコメントが含まれているか、という点です。
業界が分かっていない会社の提案書は、どの業種にも当てはまるような汎用論ばかりが並びます。逆に、踏み込んだ提案が出てくる会社は、契約後も自社の状況をふまえた改善提案を出してくれます。

契約書の雛形を事前に共有してくれるか

「契約書を事前に見たい」と伝えたときに、雛形をすんなり共有してくれるかどうかは、その会社の透明性のリトマス試験紙です。
口頭で「大丈夫です」と言うだけで、契約書の中身を見せたがらない会社は、契約上の不利な条件を意識的に隠している可能性があります。

相場から逸脱した安さ・高さの理由が説明できるか

業界相場よりも極端に安い・高い見積もりが出てきたときは、その理由を質問してみてください。
安い場合は「テンプレート流用が前提」「公開後の保守が含まれていない」「リース契約が前提」など、必ず構造的な理由があります。高い場合も「自社で撮影・取材まで一貫対応する」「業界特化のノウハウがある」など、その金額に見合う中身があるはずです。理由を説明できない場合は、後から「実は別料金でした」となる予兆と思って良いでしょう。

制作会社選びの軸については、ホームページ制作会社の選び方|製造業や商社向けの実績がある業者を見分ける基準でも別の切り口から整理していますので、あわせて参考にしてみてください。

格安・サブスク型ホームページに潜む落とし穴

「月額数千円でホームページが持てる」「初期費用ゼロ」をうたう格安・サブスク型のサービスは、その手軽さの裏に注意すべき条件が潜んでいるケースがあります。
すべての格安サービスが悪いわけではありませんが、契約前に必ず確認しておきたい点を整理しておきます。

格安HP月額の氷山図で隠れたコストを可視化
月額の安さの裏にリース総額・解約金・データ引渡し不可が潜む

「月額数千円」の裏にある複数年リース契約

月額表示だけ見ると安く感じても、契約期間が 36 ヶ月や 60 ヶ月の長期に固定されているリース契約として組まれているケースがあります。
例えば月額約 5,000 円であっても、契約期間 36 ヶ月分を合計すると約 18 万円になり、買い切り型のテンプレートサイトと総額が大きく変わらない、または上回ることもあります。

途中解約時の残債一括請求と高額キャンセル料

リース型・サブスク型の落とし穴で最も多いのが、途中解約時の残債一括請求です。
「事業の方針が変わったので、半年で解約したい」と申し出ても、残り 30 ヶ月分を一括で請求されるという契約条項が含まれていることがあります。契約書を交わすときは、解約時の金額条件を必ず逐語でチェックしておきたいところです。

ドメインとデータを引き渡してもらえないリスク

もう一つ多いのが、解約時に「ドメインは引き渡せない」「サイトのデータは渡せない」と告げられるパターンです。
独自ドメインを使っていたつもりが、実はサービス側の名義になっており、解約と同時にドメインも消える、という事態は実際に起きています。契約前に「解約時に何を持って退出できるのか」は、必ず書面で詰めておきたい論点です。

格安サービスを使うこと自体は問題ではありません。
避けるべきは、解約時の金額条件を確認しないまま、複数年のリース契約にサインしてしまうことです。

トラブルが起きてしまったときの段階的な動き方

万が一トラブルが発生した場合、感情的に動くと交渉が不利になります
段階を踏んで、まずは状況の記録と整理から入り、そのうえで交渉のルートを増やしていくのが結果的に近道です。

トラブル発生時の4段階エスカレーション図
感情で動かず段階を踏むことが交渉力を高める

まず経緯を時系列でまとめる(メール・チャット・議事録)

最初にやるべきは、これまでのやり取りを時系列で整理することです。
契約日/キックオフ日/要件確定日/初稿提出日/修正依頼日/公開予定日、それぞれの時点で誰が何を発信したかを、メール・チャット・議事録から拾い、A4 1〜2 枚程度のメモにします。

このメモがあるかどうかで、後の交渉や弁護士相談の解像度がまったく変わります。
記憶ベースで「言った/言わなかった」を争うよりも、原典(メール文面・議事録)を時系列で並べたほうが、相手にも第三者にも伝わりやすくなります。

直接交渉のルートを増やす(担当→上長→代表→法人窓口)

担当者と連絡が取れない、または話が進まない場合は、連絡ルートを増やします
担当者のメール/個人携帯/会社の代表電話/公式サイトの問い合わせフォーム/代表者の SNSなど、複数のルートで法人としての対応を求めます。担当者の個人都合(離職・体調不良など)が原因のケースも多いため、組織として動いてもらう状態にすることが目的です。

契約書を根拠に交渉する/第三者(消費生活センター・弁護士)へ

直接交渉で解決しない場合は、契約書を持ち出して論点を整理し直します
「契約書のどの条項に対して、どんな違反が起きているか」を明確にすると、相手の対応が変わることが少なくありません。それでも解決しない場合は、消費生活センターへの相談、または弁護士への相談へとステップを上げていきます

2026 年 1 月施行の取適法(取引条件適正化法、旧称・下請法)により、一定規模以上の発注企業に対する制作会社側の交渉ルートも整備されてきています。
逆に発注者として、「不当な代金減額」「やり直しの強要」を制作会社にしてしまっていないかを、念のため自社側でも確認しておくと安全です。

制作会社を切り替える前に必ず確認すべきこと

関係修復が見込めず、別の制作会社に切り替える判断をする場合、切り替え前に必ず以下を確認してください。

  • ドメイン:登録者名義/管理画面のログイン情報/DNS の管理権限
  • サーバー:契約名義/管理画面のログイン情報/FTP・SSH のアクセス情報
  • サイトデータ:HTML/CSS/PHP ファイル一式/データベース/画像素材/ロゴ・写真の元データ
  • 著作権・利用権:既存のデザイン・コードを次の会社で改修して使ってよいか
  • 進行中の未払い・未請求:清算が完了するまでに金銭的論点を残さない

これらを押さえずに次の制作会社へ切り替えると、新しい会社側で「ゼロからやり直し」になり、結果として費用が二重にかかります
切り替え判断は、現契約の清算と資産の引き渡しを完了させてからでも遅くありません。

制作会社切り替え前の5資産確認チェックリスト
5つの資産を確認せずに切り替えると費用が二重になる

よくある質問

Q相見積もりを取るのは制作会社に失礼ではないですか?

A.失礼ではありません。Web制作の発注金額は中小企業にとっても大きな投資であり、複数社の提案を比較するのはむしろ自然な動きです。比較されることに過剰に反発する制作会社は、提案内容や価格の根拠に自信がない可能性が高く、その時点で発注先候補から外して構いません。誠実な制作会社は「比較していただいて構いません。そのうえで弊社の提案を選んでいただければと考えています」と言える会社です。相見積もりは2〜3社程度を目安にすると、比較疲れせずに済みます。

Q修正回数は「無制限」と言ってくれる会社のほうが安心ですか?

A.必ずしもそうとは言えません。修正無制限を打ち出している会社の中には、見積もり段階で修正対応分のコストを織り込んで価格を高めに設定しているケース、あるいは「実質的な制限はないが、対応スピードは保証しない」という運用になっているケースがあります。むしろ、「初稿の精度を上げるためにヒアリングと参考事例のすり合わせをていねいに行い、修正は2〜3回を目安にする」というスタンスの会社のほうが、結果として満足度が高くなることが多いです。回数の多寡よりも、初稿に至るまでのプロセスの厚みを評価してください。

Q個人事業主や1人代表の制作会社に発注しても大丈夫ですか?

A.規模が小さいこと自体は問題ではなく、むしろ業界特化型のフリーランスは大手より深い理解とコストパフォーマンスを提供してくれるケースもあります。注意したいのは、担当者1人に依存する構造になりやすい点で、その方が病気や離職で動けなくなった場合は案件全体が止まりかねません。対策としては、(1)契約書にバックアップ体制または継承条項を入れる、(2)サイトデータの定期的なバックアップを発注者側でも取れる仕組みにする、(3)ドメイン・サーバーの名義を必ず自社にする、の3点を押さえれば、規模に関わらず安心して発注できます。

Q契約後にトラブルになって支払いを止めるのは違法ですか?

A.感情的に支払いを止めるのは避けたほうがよい行動です。契約書に定められた業務が制作会社側で履行されていないと主張するなら、まずその根拠を文書で示して相手に通知し、それでも履行されない場合に、契約条項に基づいて支払いを留保する、というステップを踏みます。何の通知もなく支払いを止めると、こちらが債務不履行と見なされる可能性があります。判断に迷う段階では弁護士に相談し、書面での通知の出し方を含めてアドバイスを受けるのが安全です。

Web 制作会社とのトラブルは、防ぐ手段がある類のトラブルです。
5 つの領域でどんな揉めごとが起きるかを知っておき、参考・反参考・ムードボードでイメージを共有し、RFP で要件を言語化し、契約書で 7 項目を押さえる。それだけで、起きうる事故の大半は未然に潰せます。

「優れた制作会社を引き当てる」ことよりも、「発注する側として伝える準備を整える」ことのほうが、最終的な満足度を大きく動かします。
本記事のチェックリストを次の発注の前に一度通してみていただき、自社にとって抜けている準備を埋めるところから始めてみてください。

制作会社の選び方そのものについて、別の角度からまとめたホームページ制作会社の選び方|製造業や商社向けの実績がある業者を見分ける基準、リニューアル時期の判断軸については古いホームページのリニューアル時期|今の時代に作り直すべきタイミングとメリットもあわせてご覧ください。

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