
月々の保守費用を払っているのに、画像を1枚差し替えるだけで「まず見積もりを出します」と言われる。
お知らせを1本更新するのにも、追加で1〜2万円。
そして都度、見積もり→承認→作業というステップがあるため時間もかかってしまう。
「何のための保守費用なのか・・・」
「本当に意味があるのだろうか・・・」
そう感じている中小企業の経営者は、想像以上に多いです。
この記事は、「月額を払っているのに更新が進まない」「追加費用が多い」と悩んでいる企業の担当者・経営者向けに書いています。
HP保守費用の相場と内訳を、私自身のクライアント対応の経験をもとに整理しました。
今の契約が適正かどうかを自分で診断できる5つのチェックポイントも、具体的な数字とあわせて解説します。
業者との交渉や見直しを進めるにあたって、社内で共有できる判断材料として使ってください。
読後にできること
- 今の保守費用が相場と比べて適正かどうかを判断できる
- 業者に確認すべき項目と優先順位が明確になる
- 交渉・切替に必要な根拠資料の揃え方がわかる
画像の差し替えに毎回見積もり….
その保守費用、相場からズレていませんか?
まず、私のクライアントが実際に抱えていた問題を共有します。
HP保守費用に不満を感じている方にとって、かなり身に覚えのある話だと思います。
月7万円+作業ごとの追加請求【製造業クライアントが陥っていた構造】
現在もお取引のある、某製造業のクライアントから初めて相談を受けたときの話です。
その会社は、HPの保守費用として月7万円を支払っていました。
名目は「サーバー・ドメイン管理費」。
コンテンツの誤字や突発的なエラーへの対応は含まれていたものの、それ以外の作業にはすべて追加費用が発生する契約です。
具体的には、トップページの画像を差し替えるだけで1〜2万円の追加請求。
お知らせを1本公開するのにも同程度のコスト。
月7万円×12ヶ月=年間84万円に加え、都度の追加費用が積み重なると、更新頻度によっては年間100万円規模になることもあります(※月額×12+スポット費の合算で試算)。
別にこの価格でも、HPの目的をしっかり果たすことができるなら全然いいと思います。
しかし本件はそんな状況ではありませんでした。
この状況になると経営判断としては当然、
「余計なコストがかかるなら、なるべくHPを触らないでおこう」
となります。
結果、HPの更新が止まる。
情報が古いまま放置される。
対外的に「この会社、動いていないのでは?」と見えてしまう。
HPの本来の目的である、採用、売上拡大、地域の認知、営業活動の信頼性担保などがまったく果たせない状態に陥っていました。
どうしても、
しっかりと運営されているHP=しっかりと会社運営を行っている会社である
という印象はつきがちで、この対外的な印象は、想像以上に大きいものです。
保守費用に「含まれるべき作業」と「別料金で妥当な作業」の境界線
月額の保守費用で対応されるべき作業と、別途費用が妥当になりやすい作業には、おおまかな線引きがあります。
月3〜5万円前後の保守契約でよく採用される線引きの目安は、以下のとおりです(※もちろん、サイト規模や更新頻度・内容で変動致します)。
✅ 月額保守費に含まれやすい作業(目安)
- サーバー・ドメインの維持管理
- SSL証明書の更新管理
- CMS(WordPress等)コア・プラグイン・テーマ更新
- 定期バックアップの取得
- セキュリティの基本監視
- テキストの軽微な修正
- 画像・バナーの差し替え(月数回程度)
- お知らせ記事の更新代行(原稿→公開)
💰 別途費用が妥当な作業
- 新規ページの企画・設計・制作
- サイト構造の大幅な変更
- LP(ランディングページ)の制作
- 機能追加(EC・会員機能・フォーム設計等)
- SEO記事の企画・大量制作
- サイト全体のリニューアル
線引きの判断基準
「既にある情報・素材の入れ替えや更新」は保守費用内、「新しく作る・仕組みを変える」は別料金。
この境界が契約書や見積もりに明記されていない場合、追加請求の余地が際限なく広がります。
少なくとも口頭で、可能ならばメール(文章)で残しておきましょう。チャットツールでのやり取りでも、もちろんいいと思います。
まず確認すべきは、今の保守契約の「業務範囲」に何が含まれているか。
契約書に具体的な作業項目が書かれていなければ、そこが見直しの出発点です。
HP保守費用の適正額はいくらか。規模・目的別の相場レンジ

保守費用が「高すぎる」かどうかを判断するには、相場の構造を知る必要があります。
HP保守費用は大きく3つの層に分かれており、自社がどの層のサービスを受けているのかを把握することが第一歩です。
保守費用の3層構造(維持費・管理費・運用費)
| カテゴリ | 含まれる項目 | 月額目安 (サイト規模で変動) |
|---|---|---|
| 維持費(最低限必須) | サーバー管理、ドメイン更新、SSL証明書管理 | 10,000円 |
| 管理費(安全運用には必要) | CMS・プラグイン更新、バックアップ、セキュリティ監視、障害対応、軽微な修正 | 30,000円〜50,000円程度 |
| 運用費(成果向上のため) | アクセス解析・レポート、SEO対策、コンテンツ更新代行、サイト改善提案 | 30,000〜200,000円以上 |
確認すべきは、今支払っている金額に対して、どの層のサービスまで提供されているかです。
「維持費」レベルの内容しか提供されていないのに「管理費+運用費」相当の金額を払っているなら、明らかに割高です。

月3〜5万円で対応してもらえるのが標準の作業範囲
サーバー・ドメインの管理に加え、画像差し替えやバナー更新、お知らせ記事の公開まで対応してもらうなら、中小規模のコーポレートサイト(更新が一定ある前提)では、月3〜5万円前後はよく見かける価格帯です。
ただし、含まれる作業範囲と対応回数で妥当性は大きく変わります。
弊社では記事更新頻度や内容変更の度合いにもよるので各HP管理先ごとに価格が異なっていますが、1つの事例でお伝えしますと、HPの保守管理のみであれば月5万円程度で対応しており、画像差し替え・毎月のバナー変更・お知らせ更新をすべて含めています(お知らせ内容はお送り頂きます)。
ただし月3万円寄りの場合は「年に数回の重要告知だけ対応」という最低限の保守になることもあります。
定期的な更新を想定するなら、月5万円前後が安定した運用ラインです。
個別項目はプラン差があるため一概には言えませんが、ざっくりした原価レンジを知っておくと、見積もりの妥当性を判断しやすくなります。
| 項目 | 自社直接契約の原価 | 業者経由で注意すべきライン |
|---|---|---|
| サーバー(共用) | 月500〜3,000円 | 二重取りになっていないか |
| ドメイン | 月〜250円(年額〜3,000円) | 更新期限を遵守しているか(更新しないとサイトが表示されなくなります) |
| SSL証明書 | 月0〜数万円(無料SSL or 有料版) | 小規模サイトだと有料SSLは不要な場合が多いですが、扱う内容によっては有料SSLを推奨致します。 |
| CMS更新作業 | 1回3,000〜5,000円 | 何を更新しているか(本体/プラグイン/テーマ)の明示 |
| コンテンツ更新代行 | 月20,000〜30,000円 | 実際の更新頻度に見合っているか |
月10万円超の保守が妥当になり得るケース
一方で、月10万円を超える保守費用が妥当なケースも確実にあります。
金額だけ見て「高い」と断定するのはかえって危険です。
| 条件 | 妥当な月額レンジ | 理由 |
|---|---|---|
| EC機能あり(決済・在庫管理) | 5万〜10万円以上 | セキュリティ要件が高く、決済連携の保守が必要 |
| 会員制サイト(個人情報管理) | 3万〜8万円 | 個人情報保護法対応、不正アクセス対策が必須 |
| 大規模WordPress(50ページ以上) | 5万〜7万円以上 | プラグイン互換性管理と脆弱性対応の工数 |
| 24時間監視・即時復旧体制 | 5万〜10万円以上 | ダウンタイムが売上に直結するサイト向け |
弊社の場合、月15〜20万円でお受けする保守では、いわゆる「HP管理」の枠を超えた運用支援を行っています。アクセス解析とユーザー行動の分析、問い合わせフォームのクリック率改善、サイト離脱ポイントの特定、SEO記事の企画・提案、サイト構造の改善提案など、こうした施策を月1回のミーティングでクライアントと共有しながらPDCAを回します。
この価格帯であれば、サイト構造の入れ替えや新規ページの追加も基本的に保守費用の範囲内で実施してしまいます(LP制作レベルの大規模制作は別途相談)。
判断の核心
重要なのは金額の大小ではなく、「支払っている金額に対して、実際に何をしてもらっているか」です。月7万円で画像差し替えに追加費用がかかる契約と、月5万円で差し替えもバナー更新もすべて含まれる契約。どちらが適正かは明らかです。
無駄なコストやリスクを減らす5つのチェックポイント

ここからは、今の保守費用に無駄がないかを自分で診断するための5つのチェックポイントです。
可能であれば、契約書と直近の請求書を手元に用意した上で順に確認してみてください。
① 月額費用の内訳を分解し、原価相場と比較する
最初にやるべきことは、月額保守費を項目ごとに分解し、それぞれの原価相場と突き合わせることです。
「保守管理料」「管理費」といった一括名目で月額が設定されている場合、何にいくらかかっているか分かりません。業者に「各項目の金額と作業内容の明細」を書面で出してもらう。内訳の提示を渋る業者は、その時点で透明性に問題があります。
🔍 内訳分解の目安
| 項目 | 原価相場 | 割高の目安 |
|---|---|---|
| サーバー(共用) | 月500〜3,000円 | 月10,000円超 |
| ドメイン | 月83〜250円 | 月1,000円超 |
| SSL | 月0〜数万円(無料SSL or 有料版) | 無料SSLで十分な環境に有料SSL |
| CMS更新 | 月3,000〜5,000円 | 作業内容が不明なまま高額 |
| コンテンツ更新 | 月20,000〜30,000円 | 更新頻度に見合わない固定費 |
※金額は一般的な中小サイトでよく採用される構成の目安です。作業内容や作業量、専用サーバー・WAF・監視体制などでも変動します。
※サイトへ導入する機能・ツールによっては原価が一気に上がる場合もありますのでご注意ください(例:ヒートマップ分析など)。
② 請求書の追加内容を具体的に把握&確認する
月額の保守費用を支払っているなら、「今月追加で何をしたか」に応じて請求書の内容も変動します。
(都度見積もりを取得する場合もありますが、口頭でサラッと言われてから請求書にガッツリ追加されるケースも実際に相談で聞きました)
- 追加分について具体的な内容が記載されているか
- 事前に聞いていたことと内容の整合性があっているか(「保守対応しました」だけで終わっていないか)
については、追加分がある際には必ず確認することが必要です。
気になる場合には「今月の作業内容を詳しく教えてください」と依頼してみてください。
③ ドメイン・サーバーの権限と更新期限を確認する
5つのチェックポイントの中で、最も優先度が高い項目です。
ドメインとサーバーの名義が管理会社になっている場合、解約時にドメイン移管を拒否されたり、高額な移管手数料を請求されるリスクがあります。最悪のケースでは、長年使ってきたURLが使えなくなり、検索エンジンの評価・ブランド価値・名刺や販促物の情報など、すべてを失います。
もちろん、元々面識があったり、完全に関係値が築けている先であれば100%安全とは言いませんが私の経験では問題は発生しないものと思料しています。
とはいえ、
- ドメインの登録者名義が自社か
- サーバー管理画面(cPanel等)のログイン情報を自社で保持しているか
- WordPress管理画面の管理者アカウント情報を自社で保持しているか
- FTP / SFTP接続情報を自社で保持しているか
Topic💡 2026年2月の1週目に起こった実際の話
とある病院のHPを制作するにあたり、既存HPの内部状況を確認するため管理権限の付与を依頼したところ、事務長から
「フルの管理権限はなぜか頂けないんです…管理権限を先方だけがもってしまっていて….どうしましょう….」
とご相談いただいた事象がありました。
もちろん、お金を払っているのも、HPの所有者も、その病院です。
幸いにも、エックスサーバーのログイン権限はあったため、病院側からの依頼でエックスサーバー内部から、HP管理のフル権限ユーザーを作成することで問題解決しましたが、そういうケースもあるので注意してください。
そして、書き忘れそうになりましたが、ドメインやサーバーの更新期限もHP管理会社がしっかりと把握しているか、確認が必要です。
弊社では基本的にサーバーもドメインも自動更新で設定していますが、自動更新は手動で切り替えないといけないパターンがあります。昨年「サイトが急に消えてしまいました。どうしましょう」なんて相談がありました。いわゆる【 このサイトにアクセスできません(DNS_PROBE_FINISHED_NXDOMAIN) 】的な内容の表示が出ていました。ドメイン支払いをすぐに完了することで復旧できますが、ドメイン更新の猶予期間を過ぎてしまった後に、第三者がそのサイトのドメインを取得してしまうと、絶望的な状況になってしまうので注意です。
④ 契約条件(期間・自動更新・違約金)を精査する
保守契約書の中で特に確認すべきは以下の4項目です。
- 最低契約期間の有無(「2年縛り」等がないか)
- 自動更新条項の有無と解約申出期限(例:「満了3ヶ月前までに書面で通知」)
- 中途解約時の違約金の金額と計算方法
- 解約後のデータ(サイトデータ・バックアップ)引渡し義務の明記
見落としやすいのが自動更新条項です。
解約申出期限を過ぎると、意思に関係なく次の契約期間に自動で入ります。年単位契約の場合、中途解約に残りの期間分を一括請求される設定になっていることもあります。
もうひとつ確認してほしいのが、サイトのデザインやソースコードの著作権の帰属先です。
著作権が業者側に帰属する契約の場合、解約後に同じデザインのサイトを使い続けることができなくなります。
⑤ 相見積もりを取り、交渉か切替かを判断する
①〜④の確認が終わったら、必要に応じて相見積もりを取ることもいいと思います。
- 同一条件の場合の見積もり
- 同一ではない場合の見積もり(現状を踏まえての推奨見積もり)
の2パターンを取得するのがいいと思います。
相見積もりには2つの使い方があります。
1つ目は、現在の業者への交渉材料。
「他社ではこの条件で○万円の提示がある」と根拠を持って伝えることで、感情的な値下げ要求ではなく、データに基づいた交渉ができます。
2つ目は、切替先の選定。
連絡が遅い、報告がない、権限を渡さない。
こうした根本的な問題がある場合は交渉より切替が現実的です。
相見積もりの結果がそのまま候補リストになります。
ただし注意点もあります。
複数社の見積もりを比較した場合にはコスト圧縮につながるケースがある一方で、価格だけで判断した結果、思っていた通りの動きになっていないという安かろう悪かろうパターンも実際にあります。
そのため、費用と縛り条件(解約期限・違約金)などのコストだけでなく、先方のスタンスや能力なども含めて確認されるのが良いかと思います。サービス業全般に言えることですが、Web業界は人同士のやりとりが肝です。そのため、先方との(人間的な観点での)相性なども、個人的な経験ではとても重要であると感じています。
📋 5つの質問で即判断──2つ以上「No」なら見直し余地あり
- 業務範囲は明確か?
- 追加内容は把握できているか?
- ドメイン・サーバーの更新期限は大丈夫か?
- 契約期間や解約条項、データ引渡しは大丈夫か?
- 同条件で相見積もりを取ったことがあるか?
上記のうち2つ以上「No」がある場合、現在の保守契約には見直し余地がある可能性が高いです。
ここまでで「今の保守費用に無駄があるかどうか」の診断はできたはずです。
ただし、診断結果を受けてすぐに解約や切替に動くのは危険です。
次のセクションでは、解約・業者切替時に起きやすい事故と、それを回避するための手順を解説します。
保守の解約・業者切替で起きる事故と回避策

前のセクションで「見直し余地あり」と判断できたとしても、すぐに解約や切替に動くのは危険です。
準備なしに進めた結果、保守費用の削減どころか数十万〜数百万円の追加コストが発生した事例は少なくありません。
ドメイン人質化・データ消失・セキュリティ空白──典型事故3パターン
解約・切替時に起きやすい事故は、大きく3つのパターンに集約されます。
事故①:ドメインの人質化
業者名義で取得されたドメインの移管を拒否される、または高額な移管手数料を請求されるケース。長年使ってきたURLが使えなくなれば、検索エンジンの評価・ブランド価値を一瞬で失います。名刺や販促物の刷り直しも発生します。
解約・切替の局面では、名義・権限・引渡し条件が曖昧だと交渉がこじれやすいので、契約書と管理情報を先に固めることが重要です。
事故②:サイトデータの消失
解約通告後に業者がサーバーからデータを削除するケース。契約書に「解約後のデータ引渡し義務」が明記されていない場合、法的に争うことも困難です。サイトをゼロから再構築する費用は、規模によって数十万〜数百万円に達します。
事故③:セキュリティ空白期間の発生
保守解約後にWordPressの更新が停止し、既知の脆弱性を突かれてハッキングされるケース。サイト改ざん、マルウェア感染、個人情報漏洩に発展する可能性があります。復旧費用は状況により幅がありますが、数万円〜十数万円以上になることもあります(原因調査・復旧作業・再発防止まで含むと膨らみやすいです)。
WordPressは世界的に利用者が多いCMSのため、攻撃対象になりやすい傾向があります。更新停止による脆弱性放置は、改ざんやマルウェア感染のリスクを高めます。
このほかにも、移管時にURL構造が変わったのに301リダイレクトが未設定でSEO評価が急落するケース、業者が廃業・音信不通になりドメインやサーバーの管理情報自体が不明になるケースもあります。
サーバーのログイン権限さえもっていれば、新ドメインへSEO評価を維持したまま自動遷移させる設定も可能です。
安全に切り替えるための事前準備チェックリスト
上記の事故を防ぐために、解約を通告する前に以下をすべて確認・確保してください。
- ドメイン・サーバーの名義を自社で保有しているか(未変更なら最優先で交渉)
- WordPress管理者アカウント情報を自社で保持しているか
- 最新のサイトバックアップ(データ+DB)を自社で保有しているか
- 新しい業者との契約・移管スケジュールを確定しているか
- 新旧サーバーの並行稼働期間(最低1〜2週間)を設定しているか
(サーバーを自社でログインできる環境ならこの項目は不要です) - URL構造が変わる場合、301リダイレクトの設定計画が必要
(だいたいが、切り替え先にやってもらえます)
順番が重要です
「先に新業者を確保→移管スケジュールを確定→その上で現業者に解約通知」。
この順番を守れば、サイトが宙に浮く空白期間を最小化できます。
解約を先に通告してから次を探し始めるのは、最もリスクが高い進め方です。
よくある誤解と、現実的なコスト削減の第一歩
保守費用の見直しを進める中で、多くの経営者が陥りやすい誤解が2つあります。
どちらも「安くしたい」という合理的な動機から出発しているものの、結果的にコスト増やリスク増を招くパターンです。
「自社でやれば0円」にならない理由
保守を完全に自社対応に切り替えれば費用がゼロになるかといえば、そうはなりません。外注費がなくなっても、以下のコストは必ず発生します。
| 項目 | 目安コスト | 補足 |
|---|---|---|
| サーバー・ドメイン・SSL | 月3,000〜8,000円 | 実費として不可避 |
| 担当者の作業時間 | 月5〜10時間 | WordPress更新・バックアップ・セキュリティ対応等 |
| 人件費換算 | 月1万〜3万円以上 | 上記作業時間×時給換算 |
| リスクコスト | 操作ミス時の復旧費2万〜15万円 | 専門知識不足によるサイトダウン等 |
| 学習コスト | 継続的な時間投資 | CMS・セキュリティの最新情報キャッチアップ |
見えないコストを合算すると、自社対応でも月1〜4万円程度はかかります。外注の月3〜5万円と大差がないケースも多く、専門性の面では外注のほうが有利な場面が少なくありません。
「0円にしたい」ではなく、「適正な金額で、必要な品質の保守を受ける」が正しいゴール設定です。
「安い業者に変えれば解決」のリスク
もうひとつの典型的な誤解が「もっと安い業者に乗り換えれば、それで全部解決する」という考え方です。
極端に安い保守(たとえば月数千円など)には、以下のリスクが伴います。
- トラブル時の対応が遅い、または対応スキルが不十分
- 最低限のセキュリティ対策しか行われていない
- 月額は安い代わりにスポット対応費用が高額(バグ修正1回で数万円〜)
- 対応範囲がごく一部に限定されていてサポートの質に問題がある
月額費用だけを比較して業者を選ぶと、結果的にスポット費用が膨らんで「前より高くなった」という事態にもなりかねません。
業者を変えるなら、月額費用だけでなく対応範囲や能力・レスポンス速度・スポット費用有無の設定を比較対象に含めてください。
お知らせ更新の自社化から始める、限定権限という選択肢
完全な自社運用も、安い業者への丸投げもリスクがある。では現実的に何から始めるか。
弊社がよくお勧めしているのは、「お知らせ(ニュース)の更新だけを自社で行う」という方法です。
最近のCMS(ワードプレスなどのHP管理/制作ツールのこと)では、権限付与のレベルを段階的に設定できます。
たとえば「お知らせ記事の投稿・公開だけができる権限」を社内のスタッフに付与すれば、サイト全体の構造やデザインを壊すリスクなく、日常的な情報発信を自社でまかなえます。
正直、こちら側(管理・保守側)としても会社の大切なニュースは自社社員で発信してもらった方が、会社にとっても良い空気が生まれるのではないかな?と思っています。
管理会社の中には「変にいじられてバグってしまうので、一切権限は出せません」と説明するケースがあります。しかし実務的に言えば、投稿権限だけに限定すれば、サイト全体が致命的に崩れるリスクは大幅に下げられます(ただし操作ミスをゼロにはできないため、公開手順やバックアップ運用は必要です)。
権限を出さない理由が本当に技術的なものなのか、それとも囲い込みのためなのかは、冷静に見極める必要があります。
加えて、バナーの差し替え素材を自社で作成できる体制を整えれば、コスト削減の幅はさらに広がります。保守業者に依頼すべき範囲と、自社でまかなえる範囲を切り分けること。これが無駄なコストを削る最も現実的な第一歩です。
保守費用の見直しを進めるための交渉手順
チェックポイントで問題が見つかり、見直しを進めると決めた場合の具体的な手順です。
交渉は感情的にならず、根拠資料をもとに進めることが鉄則です。
交渉前に揃えるべき3つの根拠資料
業者との交渉に入る前に、以下の3点を手元に揃えてください。
これがないまま「高いから下げてほしい」と伝えても、感情的な値下げ要求と受け取られて終わります。
❶ 現在の保守費用の内容がわかるもの
月額保守費を項目ごとに把握し、可能なら各項目の原価相場と比較したものがあれば⭕️
❷ 相見積もりの結果
同一条件で取得した他社見積もり。「この条件でこんな提示がある」と具体的に示せることが、交渉の最大の武器になります。
❸ 現契約の問題点リスト
作業内容の不満、対応速度、追加請求の頻度、権限の非開示など、具体的な事実ベースの問題点。「不満」ではなく「事実」として列挙することが重要です。
減額交渉から解約通告までの具体ステップ
以下の順番で進めます。途中で交渉が成立すれば、それ以降のステップは不要です。
現状整理
問題点を事実ベースで明文化する。
相見積もり取得
同等条件で見積もりを取る(+別プランの見積もりも取っておく)。
現業者への書面通知
「契約内容の見直し協議を希望する」旨を書面(メール可)で伝達。口頭のみは避ける。
減額交渉
根拠資料(内訳分解+相見積もり+問題点リスト)を提示し、適正価格への変更を要請。「感情」ではなく「データ」で話す。
交渉不調の場合 → 解約通知
契約書記載の解約条件に従い、書面で通知。ドメイン・サーバー・データの引渡しスケジュールを明記する。
移管実行
新旧サーバーの入れ替えがもし発生する場合には並行稼働期間(最低1〜2週間)を設定し、DNS切替・動作確認を経て完了。SEO評価への影響を最小化するため、URL構造が変わる場合は301リダイレクト(指定した旧サイトへアクセスすると自動的に新しいサイトへ飛ぶ設定のこと)を必ず設定。
実際のところ、根拠資料を揃えた上で交渉に臨めば、根拠資料が揃っていれば、条件見直し(範囲整理・単価調整)の議論は進めやすくなります。
大切なのは「不満だから安くしろ」ではなく、「この相場データと比較して、御社の金額にはこの点で乖離がある」と、事実で話すことです。
金額だけで「高い」「安い」を断定しない
ここまで繰り返しお伝えしてきましたが、HP保守費用の適正・不適正は金額の数字だけでは決まりません。
皆さんの会社の目的、HPに求める役割、そして実際に提供されている保守内容、この3つを照らし合わせた上で判断してください。
単に月5万円、7万円、8万円という数字だけで断定的に判断するのは難しく、実際の目的に対して具体的な保守内容まで照合することが、正しい判断の前提です。
保守費用の見直しは、HPの目的を再確認するところから
HPの保守費用が高すぎるのではないか?
その疑問を持った時点で、見直しの第一歩はすでに踏み出しています。
ここまでの内容を整理すると、やるべきことは以下の3つに集約されます。
- 現状の把握:内訳分解・報告書確認・名義確認・契約精査(5つのチェックポイント)
- 比較と判断:相場との照合+相見積もりの取得
- 行動:交渉 or 切替(根拠資料を揃えた上で)
そして、どの判断をするにしても前提になるのは「自社のHPは何のためにあるのか」という問いです。
採用を強化したいのか。売上につなげたいのか。地域での認知を広げたいのか。営業活動の信頼性を担保したいのか。
目的によって必要な保守の範囲も変わりますし、かけるべきコストの水準も変わります。
目的と保守内容がかみ合っているなら、月額の金額が多少高くても正当なコストです。
逆に、目的に対して保守がまったく機能していないなら、いくら安くても無駄な出費です。
最後に:HP管理の判断はこの3点で決まります
- 目的:採用/売上/信頼担保/情報発信のどれを重視するか
- 範囲:月額内に含まれる作業(更新・報告・復旧)を明文化できているか
- 主導権:ドメイン・サーバー・WP管理者情報を自社で保持できているか
上のどれかが欠けていると、金額が安くても“運用の不自由さ”がコストとして跳ね返ります。
論理的に考えた上で運用していくこと。
その判断材料として、この記事の内容を使っていただければと思います。